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2007.05.24

裁判員制度、問題がゾロゾロ

読売新聞より「裁判員制度、裁判長から死刑選択の可否質問も…諮問委答申

2009年に始まる裁判員制度に向け、最高裁の刑事規則制定諮問委員会は23日、裁判員の日当を上限1日1万円とするなど裁判員制度に関する規則案をまとめ、最高裁に答申した。

裁判員の選任手続きでは、呼び出しを受けて裁判所に来た約30人の候補者の中から、事件を審理する6人の裁判員が選ばれる。

候補者への質問は原則、全員に対して個別に行われるが、まず、予断や偏見なく審理出来るかどうか判断するため、〈1〉事件の被告や被害者と関係があるか〈2〉自分や家族などが類似の犯罪の被害に遭ったことがあるか〈3〉事件のことを報道などで知っているか――などを聞くことになる。

さらに、死刑の可能性がある重大事件では、「有罪とされた場合、法律で定められた刑を前提に量刑を判断出来ますか」「どのような犯罪であっても、絶対に死刑を選択しないと決めていますか」など、死刑制度に対する考え方を確かめる質問もされるという。

裁判員候補者に対する質問案については、法曹3者の中には、もっと候補者の家族構成や学歴、職歴、裁判員としての心構えなどにも踏み込んで聞くべきだとの意見もあったが、裁判員の負担軽減を考え、ぎりぎりまで質問数を絞り込んだ。

わたしは裁判員制度について、当初から賛成でしたが実施が近づくにつれてドンドン問題が出てきて「本当に出来るのか?」という感じが強くなってきています。

今回発表された内容もちょっと「???」です。整理すると

  • 30人の裁判員候補を裁判所に呼び出す
  • 1人ずつ面接する
  • 事件の被害者・加害者と関係があるか
  • 自分や家族が類似の犯罪被害に遭ったことがあるか
  • 事件のことを報道で知っているか
  • 量刑を判断できるか
  • 死刑を選択できるか
  • 4人までは検察・弁護側が裁判員になることを拒否できる。
  • 最終的に6人の裁判員を選任する

これを実行するのにどれほどの時間が掛かるのでしょうか?
そもそもこれを一日で全部終わらせることが出来るのか?

8時間として(そんなに時間は掛けられないと思う)480分、30人で割ると1人16分。
各種手続きを考えると、1人の面接に割ける時間は数分でしょう。

そもそも、上記の内容を一律に面接で聞くとして、その結果の反映は一律になるとは思えない。
特に「類似の犯罪被害に遭ったことがあるか?」について、YES であれば裁判員として不適格とするのは合理的と言えるのか?
まぁ被害に遭ったとなれば、相応に思い込みがあると断ずるのは当然かもしれないが、被害に遭わなくても思い込みがある例は幾らでもあるだろう。
わたしは、裁判員制度すなわち一般市民が判決に関わる必要があると考えた理由の一つに、裁判官の知識が社会の常識とずれている場合にどうするのだ?という問題が意識がありました。

特に技術的あるいは専門家の領域の知識については、裁判所が選任した鑑定人の意見を無批判に採用したりしていないのか?といったところが問題だと思っています。
裁判員制度で改善が期待できるのがこういった面であるとすると「思い込みがあった方が良い」とも言えるわけです。

冷静に考えるとえらく難しい問題であるのは明らかですが、これを「同種の犯罪被害に遭ったことがあるか? YES or NO を聞いただけで判定できるのか?判断の意味があるのか?」とは思うわけです。

「量刑の判断が出来るか」については聞くだけムダだと思う。
元の記事では「有罪とされた場合、法律で定められた刑を前提に量刑を判断出来ますか」となっているが、この質問に対して「判断できません」というのはどういう人を想定しているのだろう?逆に「どんな場合でも絶対に正確に判断できます」と返事できる人は居るのだろうか?
まして「刑の相場はどうなっているのだ?」は以前から問題になっています。「判断できません」という回答の中に少なからず「相場は分からない」が入ってしまう可能性がある、おそらくは「相場の判断については問題にしない」となるとは思いますが、そんなことを面接時間数分の間で説明や議論が出来るとは思えない。

こんな風に問題点を考えた場合、30人の候補から6人を選ぶことについて、何日も掛かるようだと実際の裁判を開くのがいつになるか分からない、ということになりかねないのではないか?と危惧します。

読売新聞の別の記事を紹介します。「同一被告複数事件の「部分判決制」成立…裁判員制へ法改正

2009年に始まる裁判員制度に向け、複数の事件で起訴された被告の裁判を事件ごとに分離し、それぞれ別々の裁判員が審理する「部分判決制度」を盛り込んだ改正裁判員法が22日、衆院本会議で可決、成立した。

今回の改正は、1988~89年に幼女4人を次々に殺害した宮崎勤死刑囚の裁判のようなケースを想定している。
この裁判では四つの事件を順々に審理したため、1審の死刑判決まで7年かかった。
裁判員制度で同じ方法をとると、裁判員の負担が大きくなる。

このため、導入される部分判決制度では、例えば、被告がA、B、Cの三つの事件で起訴された場合、裁判官が裁判を三つに分離する決定をし、それぞれ別の裁判員を選ぶ。
裁判官はすべての審理を担当する。

この法律改正については、わたしが読んでいる法曹関係者の記事にかなり明確な批判が出ています。

元検弁護士のつぶやき

●裁判員制度の「部分判決制」
誰が考えたのか知りませんが、かなり無茶苦茶な制度のように思います。

ボツネタ

裁判員法 施行もされていないのに 改正法が成立
最初の法案が,よく考えず,とりあえず,成立させたものだっていうのが,よくわかりますね。

こういうニュースと合わせて読むと「現行の法体系に裁判員制度だけ取って付けてもダメだろう」となりますが、これは以前から指摘がありました。

1年前の記事ですが「裁判員制度・自白を考える」で、落合弁護士の記事を紹介しています。

自白に依存した立証が多用される制度(正に「自白の重要性」が語られる、我が国の現行刑事司法です)においては、自白の任意性(証拠能力)、信用性(証明力)の評価が極めて重要にならざるを得ず、そういった評価を裁判員に強いるのは、極めて困難(ほとんど不可能)であるというのが、私の率直な意見です。

この問題は、

自白に依存した立証を多用させる刑事実体法の
内容によるところが大きく、
本当に裁判員制度を実効性のあるものにしよう
とするのであれば、
刑事実体法を大改革し、
犯罪成立上、客観的な要素を中心に据えて、
犯罪体系を構築する必要があるでしょう。
その点を放置したまま、裁判員制度を導入しても、裁判官や検察官、弁護士(いずれも専門教育を受け職業として刑事裁判に携わっている)ですら認定に悩む自白の任意性、信用性を、裁判員に的確に判断しろ、というのが無理というものです(例外はあると思いますがごく一部でしょう)。

各地で、裁判員制度を想定した模擬裁判が行われているようですが、やればやるほど、こういった本質的な問題を解決しないまま制度だけを作ってしまった問題点が深刻化するだけではないかと思います。

と述べていらっしゃいます。

おそらくは、問題のかなり多くがここに集中するのですが、実は法律の構成に「犯意」が入っているので、今度は法律全体を変えないとダメだとなって、それでは法律の基になっている文化についても検証が必要だ、となりますから「百年河清を待つ」でも出来ないことでしょう。
一方で、法律も国内や国内の文化だけに立脚していればよいという時代は終わりつつあって、刑事罰や裁判のあり方について世界中が相互に批判しているのですから、何らかの世界的な文化水準に合わせた法的判断の標準化、といったことが求められているのも明らかです。
ドンドン話は大きくなっていきますが、これが現代なのでしょう。

5月 24, 2007 at 09:57 午前 裁判員裁判 |

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コメント

>「量刑の判断が出来るか」については聞くだけムダだと思う。
>元の記事では「有罪とされた場合、法律で定められた刑を前提に量刑を判断出来ますか」となっているが、この質問に対して「判断できません」というのはどういう人を想定しているのだろう?逆に「どんな場合でも絶対に正確に判断できます」と返事できる人は居るのだろうか?

これは,法定刑に死刑がないのに「こんなやつ絶対死刑!」とか言い出しませんよねって意味だと思います。
冷静に法定刑から判断してくれますよね?って言いたいんだと思います。

投稿: 九州 | 2007/05/27 4:06:13

>裁判員制度で改善が期待できるのがこういった面であるとすると「思い込みがあった方が良い」とも言えるわけです。

裁判員制度は,一般人の感覚を裁判に反映させようとして始まる制度です。
ここでいう一般人とは無作為抽出・誰でも良しというわけではありません。
裁判の公平も保たれなければなりません。
同じように性犯罪を犯した場合でも,性犯罪被害経験者ばかりで構成された6人の裁判員に裁かれる被告人と,そういった経験がない6人の裁判員に裁かれる被告人とでは,特に量刑判断において大きく変わってくることが予想されます。
それはできる限り避けなければならないのです。

ただ,常に性犯罪被害者が一人加わる,ということなら,むしろ評議内容が濃いものになることも予想されますが。

投稿: 九州 | 2007/05/27 4:17:46

何回か紹介していますが(結構有名な例だそうですが)わたしがトンデモ判決に興味を持った例に「科学的にトンでもない」判決というのがありました。

科学的にトンでもない判決というを考えてみると、地動説の裁判当時だと天動説の判決は法的には正しかったとと思います。(あくまでも事実認定についてです。思想信条に踏み込んでいることは別)

つまり「絶対的的な真理」を裁判所が決めることは出来ない、というごく当たり前の事です。

そうなると、裁判所が決定する「真実」とは絶対的な真理から完璧な誤解の間のどこかになるわけで、基本的に「判決時点での合理的な判断」なのでしょうからほとんど常識の範囲でしょう。

たまたま、裁判官の知識が無かったり間違っていたりすると「科学的にウソだ」となりますし「特定の鑑定人の判断で判決が出ている」なんて問題にもなります。

わたしが裁判員裁判(陪審員でも良いけど)など裁判に社会常識をもっと多く入れるべきだと考えた最大のポイントがここで、いわばより多くの知識や判断を反映させるべきだ、ということです。

その意味では裁判員制度で裁判員が裁判官と同列というのはわたしの考えとはちょっと違っています。
特に検察あるいは弁護側の主張の範囲でしか事件を解明できないのは問題があるのではないか?と感じるところです。

それでも「判断の範囲が広がるのは良いのだろう」なんて感じですね。

投稿: 酔うぞ | 2007/05/27 10:55:21

九州さん、コメントが前後しますが。

    >「量刑の判断が出来るか」については
    >聞くだけムダだと思う。
    
    これは,法定刑に死刑がないのに「こんなやつ絶対死刑!
    」とか言い出しませんよねって意味だと思います。

裁判所(裁判長)が裁判員候補に質問する内容なので、結果は「裁判員の適格性の審査」なのですよね。

「量刑を判断できますか?」という質問に「どんな条件でも必ず判断できます」と断言することは裁判官も含めて誰にも出来ないはずで、断言する人が居たらその人は神を気取っているような変な人だと思われるでしょう。

普通の人は「裁判で明らかになった証拠に基づいて法律の範囲で判断することが出来ると思う」ぐらいの回答にしかならないと思うわけです。

そこで多くの場合は「(専門家じゃないから)なんとも言えません」なんて回答になるのではないか?と思うのです。
つまり、適格性の審査の役に立つとは思えない、ということなのです。

ご指摘の「法定刑の範囲でしか・・・」などといったことは、裁判員が決定した後に裁判所が説明することになるんでしょうかね?
ここらのやり取りを想像すると本当に「12人の怒れる男」を彷彿とします。


「裁判員制度に賛成」を表明しているわたしとしては抵抗感が極めて強いのですが、最高裁(法務省)は裁判員制度に色々な問題が想定できるのに、それを単に「こんなに簡単なこと」とごまかすというか弥縫策に走っているというか、という印象があります。

他のブログでも話題になっていますが、連日開廷だと書類の準備を一晩で終わらせないといけない。
こういう全くの事務上の問題をどうするのか?といったところがありますね。
そうしたら、複数の起訴があった場合には裁判を分けますと言い出した。
なんかドンドン問題が拡大ているばかり、という印象があります。

投稿: 酔うぞ | 2007/05/27 11:18:02

裁くほうとしては、面倒で出たくないから面接で宣誓拒否の意思をちらつかせる。それでも選ばれたら、宣誓拒否で晴れて罷免。
裁かれるほうとしては、裁判員制度は憲法80条違反で無効だと抜かしてみる。

投稿: 名無し様 | 2007/10/16 16:27:54

裁判員制度はいらない。
私は人を裁けない。
テレビを見ていたら実に強制的。
「辞退したくてもできない。」って。
裁判員になりたくない人だっているんです!
勝手に始めないでください。
誰か廃止にしてください。お願いです。
もし私が呼ばれたら自殺を覚悟します。

国民が裁判に参加して何の利益になる?
それも強制的に!
こんな最悪な制度ありません。
とにかく良い印象を受けない。
強制的に人を裁けと?無茶です。
適性検査で暴れて辞退する。
以上!

投稿: | 2007/11/23 21:17:02

裁判員制度の導入の是非!!
私の結論を先に言えば反対です、それより以前に司法が
行うことが有ると思います、一つには司法の場へテレビカメラの導入です、始めは凶悪犯等、又は最高裁の大法廷等です、その後徐々に拡大して司法を国民に広めるべきと思うます。
それからでも裁判員制度の導入しても良いのでは、
次に、義務と権利の差が多過ぎると思います、守秘の義務が殺人犯の時効が15年なのに一生とは、せめて5年でしょう、
日当が1万円以内のおかしいです、犯人?に有罪、無罪を決めるときの精神的苦痛の代償とは、
国民のどのようなメリットがあるのか判りません。
私の処に登録封書がきましたら、そのまま返送します。
                             以上

投稿: 織田 | 2008/11/27 23:36:13

>私の処に登録封書がきましたら、そのまま返送します。

う~ん・・・・
わざわざ、裁判員法違反にならないでも、良いのではないでしょうか?

投稿: 酔うぞ | 2008/11/30 11:48:47

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