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2007.03.08

被害者参加制度

サンケイ新聞より「裁判への「被害者参加制度」 一部被害者が「反対」要望書
犯罪被害者や遺族らが刑事裁判に参加して被告人に直接質問などができる「被害者参加制度」に絡み、導入に反対する一部被害者や弁護士らが7日、「被害者と司法を考える会」を設立し、法務省に要望書を提出した。
同制度の導入を盛り込んだ刑事訴訟法改正案が今国会に提出されるのはほぼ確実だが、同会は「現行制度案では公判で被害者が加害者側から攻撃される恐れがある」などとして導入に反対している。
「被害者に手厚い司法」をめぐり、被害者や関係者の受け止め方が多様であることを物語る動きといえ、制度導入に向け今後も議論を呼ぶことになりそうだ。

法制審議会(法相の諮問機関)は2月、被害者参加制度と、被害者が刑事裁判の法廷で民事上の損害賠償を請求できる「付帯私訴制度」の導入を答申。
法務省は「被害者参加制度」と被害者が刑事裁判の法廷で民事上の損害賠償を請求できる「付帯私訴制度」の導入に向け、閣議決定を経た上で刑訴法改正案を今国会に提出する予定だ。

法案が成立すれば、来年の秋から冬には制度が始まり、一般国民からくじで選ばれた裁判員が裁判官とともに刑事裁判の審理に参加する裁判員制度(21年5月までに導入)より先行することになる。
しかし「被害者と司法を考える会」は7日の要望書で、「制度を選択した場合、公判で加害者側から攻撃される二次被害、選択しなかった場合は被害者感情を過少にとらえられる危険性が予測される」と問題点を指摘。
その上で、(1)事件直近から被害者を支援する弁護士を国費で付ける(2)裁判員制度の導入後に被害者参加制度を加えた模擬裁判を実施し、導入すべきプランを複数用意した上で議論する-などを提言している。
この記事は、3月7日に「被害者と司法を考える会」が要望書を出したというものですが、旧知の山下幸夫弁護士が3月4日に「刑事裁判に犯罪被害者や遺族が直接参加する制度を認めることができるか?」を書いています。
犯罪被害者や遺族が、刑事裁判に出廷して検察官の横に座り(要綱では明確にされていないが、そのようになることが予想される)、証人尋問、被告人質問、求刑を含む意見陳述を行うことによって、日本の刑事裁判は大きく変質することになる。

それは、刑事裁判の場に、犯罪被害者や遺族の「怒り」を持ち込むことを認め、その結果、刑事裁判が「闘いの場」となって、冷静で公平な審理が期待できなくなることを意味している。
特に、2009年から開始される裁判員制度においても、被害者参加制度が実施されることから、普通の市民である裁判員に強い影響を与え、混乱を招くおそれがある。

政府は、お互いに市民同士である犯罪被害者や遺族と加害者を、直接に刑事裁判の場で対峙させ戦わせることによって、より被告人に対する厳罰化を進めるとともに、犯罪被害者や遺族に対する経済的な支援を行うことなく済まそうとしているのであり(「安上がりな刑事政策」)、犯罪被害者や遺族が政府に不満の矛先を向けないように目を逸らさせようとしていると考えられる。
被害者(遺族)が法廷に出て何かをすることにどれほど意味があるのか以前から疑問に思っていましたが、こんな意見が実際の被害者から出て来て驚いています。

被害者が一律に法廷に出たいとは思わないでしょうから、裁判の公平性という点でも大問題でしょう。
もちろん完璧に公平ということはないわけですが、検察・弁護・判事という形はどんな刑事裁判でも揃っていて、手続きが文章中心だとの批判はあるものの手続き自体はどの裁判でも同じ。
検事・弁護士・判事の個性によって例えば証拠書類をどの程度用意するのかといった裁判の質の面ではそれぞれの裁判で違うわけですから、この段階で完全な公平ではないと言えます。

これに裁判員制度が入ってくると、裁判員の個性はバラバラですから判決がバラつくことにはなるわけで、それは社会一般が「裁判員制度が良いよ」とすれば「判決のバラつきも社会的に許容される範囲内」ということでしょう。

それぞれの裁判で証拠そのものの提出の仕方が違うのは当然で、その中には「証人による証言(証人尋問)」も違うわけです。
証人については検察・弁護・裁判所がそれぞれコントロールしていて証人は基本的には「聞かれたことについてだけ回答する」立場ですから受け身なわけです。

「被害者参加制度」は証人とは別の次元にしないと新たに制度を新設する意味はないわけで、報道されている範囲では尋問・質問を積極的に発言する主体的な立場になるのでしょう。

これは被害者誰にでも同じように出来ることではないのは明らかだし、第一被害者といっても一人だけではないでしょうから「だれが被害者代表になるのだ?」といったことになると思います。

そもそも、裁判制度(公訴制度)が人類史上で長く評価されているのは個人的な復讐システムはうまく機能しないから、だったのでしょう。
事件の判断を社会にあずけることによって、安定した判決が保証されそれが社会の安定になる。
これを個人に戻して復讐刑的な要素を入れることと、安定した判決を得ることが両立するとはちょっと思えない。

要するに「被害者参加制度」は実際的に無理であって、(被害者)証人への法的サービス(アドバイス)の拡充といったことの方が実際的なのではないだろうか?

3月 8, 2007 at 10:46 午前 裁判員裁判 |

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