無資格者のエレベータ点検
読売新聞より「シンドラーなど2社、経歴詐称でエレベーター点検資格」
エレベーター会社「シンドラーエレベータ」(東京都江東区)と、独立系保守点検会社「ハイン」(新潟県三条市)の社員、元社員計67人が、実務経験を偽ってエレベーター検査の資格を得ていたとして、国土交通省は27日、全員の資格を失効させた。両者とも「無資格者は一部」とも受け取れるコメントをしているが、シンドラー社が53人、ハイン社が14人というのは社員数に比べてどうなんだ?と気になって調べてみた。
失効となったのは、シンドラー社が87~03年にかけて「昇降機検査資格者」の資格者講習を受けた53人、ハイン社が01~06年の14人。
67人は、受講資格である、専門学歴に応じた実務経験年数が足りなかったのに、入社年次や勤務内容を偽って受講し、資格を得ていた。
中には、11年の実務経験が必要なのに、実際は入社直後だったり、営業担当しかやっていなかったケースがあった。こうした経歴は提出書類に社長などの印鑑とともに会社が証明しており、国交省は会社ぐるみの不正行為と判断した。
エレベーターには年に1回、建築士や昇降機検査資格者による法定点検が義務づけられている。国交省では、67人のリストを建物を所管する全国の自治体に送付、再点検の対象となるエレベーターの特定を急ぐ。
今回の不正は今年1月末、国交省などに、両社別々に送られてきた匿名の投書で発覚した。
シンドラー社社長室の話「本社として指示をしたわけではないが、有資格者を増やすことをビジネス上の優先項目としており、各支社などに不正を許す雰囲気があったのかもしれない。関係者の方にご迷惑をおかけしたことをおわびします」
ハイン社の話「仕事の段取りを優先させるために、現場の担当者の判断で行っていたようだ。不正を把握していなかったことは非常に申し訳ないと思う」
シンドラー社
従業員 340人(2005年12月31日現在)ハイン社
53/340=16%
従業員数 42人だがしかし、エレベータ製造会社や保守会社でも全社員が有資格者というのはあり得ないから、シンドラー社では全社員の1/4が保守サービス担当者だと仮定すると、85名中の53名が無資格者だとなってしまう。14/42=33%
同様に、ハイン社は専業の保守サービス会社だから全社員の2/3が担当者であるとすると、28名中の14名が無資格者。
過半数が無資格者だったということになってしまう。
エレベータの保守料金がものすごいダンピングになっていたというのは、「エレベータ死亡事故・その10」やそこにも紹介している「シンドラーエレベータ・自治体困惑と言うが」に書いたように、競争入札によって「内容を問わず安ければよい」とやるから、こんな事が起きるのでないのか?
そうでなければ「エレベータの保守点検費が3年間で1/4になる」なんてことは起こりえないだろう。
もし、同じような物品やサービスについて競争入札つまり価格調査をするのであれば、平均値を調べて平均値であれば平均的な物品やサービスを買うことが出来るだろうし、さほど難しい判断も必要ないだろう。
それが、平均値よりかなり外れた価格であれば「どういう理由でこんな事になっているか?」と調べるからこそ、価格.com が必要とされるわけですよ。
これはものの当然と言うべきで「安くなる(高くなる)のには理由がある」だから、採用する側の調査コストや後からの点検や場合によっては事故が起きたときのリスクまでもコストとして潜在的に上乗せされているはずで、それを無視しないと「3年間で1/4になった」なんて現象を見逃してしまうことになります。
実際に、港区のマンションで使われていたシンドラー社製のエレベータは二基とも他社製に交換になりました。そういうコストとして跳ね返ってきたのです。
もちろん、人件費の問題もあるでしょうからニセの有資格者なんてものが出てきた。
先日、どこかのテレビ局の社会評論の番組でこんな事を述べていました。
自由競争社会にすることで、価格競争になって耐えられない企業は市場から退場するから、結果的に適正価格の市場が形成されると期待していたのだが、日本の企業はほとんど退場しない価格割れでも品質を落としてでも市場にしがみつく。これは一面では正しいでしょうね。
この結果として適正価格を大幅に割り込んで安全性などを無視しするところまでコストダウンしても良いという風に変わってしまった。
自由競争で健全な市場が形成されなかった。
日本の市場は自らリスクを取るという習慣がほとんど無いです。その結果が「安くなっても品質は変わらない」という誤解が生じています。
もちろん一部には需要家側が品質などをがっちりチェックしている業界はありますが、それは正に「業界人」の世界の話であって、専門家では無い人が構成する「市場」では相変わらず「値段だけの比較」になってしまっています。
ここにこそ今回の問題の根っこはあると思います。
3月 27, 2007 at 10:50 午後 事故と社会 | Permalink
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