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2006.11.10

合計特殊出生率が1.8になったら

サンケイ新聞より「出生率「1.8」で人口推計 「子育て層」もベース
厚生労働省は9日、潜在的な「子育て層」をもベースにした新たな将来人口推計を年内にも出す方針を固めた。
従来の人口推計は、過去の出生率や未婚率など実績をベースに予測する手法がとられている。
新たな人口推計は、独身者の結婚が進み、夫婦が理想とする数の子供が実際に生まれた場合、合計特殊出生率が平成17年の1.25から1.8程度まで回復するとの試算に基づくもの。
少子化に歯止めがかかる社会の姿を示すことで、少子化対策の機運を高め、具体的な施策を見いだすのが狙いだ。
コリャなんだ?アドバルーン記事とでもいうべきなのか?
  1. 最初は「出生率が1.8になった」という記事なのか?と思った。
  2. しかし、「年内に将来人口推計を出す方針を決めた」であった。
  3. さらに「理想とする子供が実際に生まれた場合」とはなんだ?
三重に予防線を張っているというべきか?
記事は次のように続く。
国立社会保障・人口問題研究所が17年に実施した出生動向基本調査によると、夫婦が理想とする子供の平均数は2.48人、実際に持ちたいと考える「予定子供数」も平均2.11人。
だが、経済的な理由などによる理想と現実のギャップは大きい。
また、独身者のうち将来結婚を考えている人は男性87%、女性90%にのぼる。
厚労省は有効な対策を講じればギャップの大半は埋まり、合計特殊出生率の1.8程度への回復は可能だとの分析結果をまとめた。

こうした潜在的な「子育て層」を含めた1.8に基づき新たな人口推計を出すのは、「楽観的」な数値を示すことで少子化の反転はそれほど困難ではない、との認識を国民にもたせ、年金制度に対する不信のさらなる拡大を緩和したいとの思惑もある。

新たな人口推計は、出生率が1.8まで回復した場合のほか、1.5程度にとどまった場合など複数のケースについて出し、将来の労働力人口など経済的な影響も予測する。
従来の人口推計はこれまで通り年内に公表する。
厚労省は年明けにも、社会保障審議会(厚労相の諮問機関)に有識者による検討部会を新設し、新たな人口推計結果を基に今後の少子化政策を検討する。
これで明らかと言って良いが「少子化は簡単に緩和できるから、少子化問題を考えないでも良い」という方針でこんな事を言い出したのだろう。
考えたくないからその根拠を作り出す、といった話ですな。

そもそも、合計特殊出生率の計算方法がほとんど知られていないでしょう。
人口統計の「5歳階級」と呼ばれる5歳(5年間)で分類した人口別に15歳から49歳までの7段階(15-19、20-24、25-29、30-34、35-39、40-44、45-49)の女性が出産した率を足し算したものです。正確には「コーホート合計特殊出生率」と呼ぶ手法のようで、期間合計特殊出生率なので「一人の女性が生涯に産む子供の数」そのものではないわけです。

人口統計から見てみると、14歳以下や50歳以上の出産もありますから出産の傾向を示している、ということです。

当然ですが、人口増加になるためには出生率が2以上であることが必要です。つまり1.25から1.8になっても人口が減ることに違いはないのですから、人口が減ることが問題ではないということなのでしょうか?
であるとすると「どのように人口が減るのが良いのか?」という問題になりますね。


それにしても「理想とする出産が実現すれば」は厚労省や人口問題研究所が出す見解としては相応しくないだろ。
そんなデータならパソコンにソフトウェアを入れれば誰だって計算できる。
合計特殊出生率が変化するのは、20-24、25-29、30-34ぐらいの年齢層だろう。
ところがこの世代は当然のように全体の出生率の大半を占めているわけで、そうそう増えるものではないと思う。さらに注目するべきなのはこの世代が次の世代に入れ替わるのには15年掛かるということで、ちょっと上がってすぐ下がるといったことなったらどうなるのか?
かなり強力な対策を100年ぐらい期間続けないと全体の傾向が動くことにはならない。


こんな風に見ると、「見解を発表する方針を決めた」という歯切れの悪いことになっているのは、どっちを向いて言っているのだ?と考えてしまう。

11月 10, 2006 at 10:04 午前 人口問題, 国内の政治・行政・司法 | | コメント (0) | トラックバック (3)

2006.11.08

足立区の教育委員会は??

11月4日に「学力テストで予算に差 足立区教委、小中学校4ランクに」というニュースがあった。(朝日新聞より)
東京都足立区教委は、区立小中学校に配分する07年度予算で、都と区の教委がそれぞれ実施している学力テストの成績に応じて各校の予算枠に差をつける方針を固めた。
小学校計72校、中学校計37校をそれぞれ4段階にランク分けし、最上位は約500万(中学)~約400万円(小学)、最下位は約200万円にする予定。
都のテストで同区が低迷していることなどから、学校間競争をさらに促す必要があると判断した。

区教委によると、差をつけるのは各校の自主的な取り組みを支援する「特色づくり予算」の金額。

ランクづけの大きな根拠は、年1回実施される都の学力テスト(小5と中2の全員が対象)と区のテスト(小2以上の全学年全員が対象)。
都テストで、各校の平均正答率が、都平均と区平均以上の科目がそれぞれいくつあるか▽区テストの成績が前年度からどれだけ伸びたか――などの項目を設けて査定する。

内藤博道・区教育長は「頑張った学校に報い、校長と教員の意欲を高めることが、区全体の基礎基本の学力向上につながる。
これまでも希望に応じて非常勤講師を追加配置するなどの対策をとっており、成績のよい学校ばかり優遇するわけではない」と話している。

文部科学省の担当者は「学力テストの結果を予算に反映する例は聞いたことがない」と話している。
これがあっと言う間に撤回になってしまった。

朝日新聞より「学力テストで予算ランク分け撤回 東京・足立区教委
東京都足立区の07年度予算で、学力テストの成績に応じて各区立小中学校をランク付けし、学校への配分額に差をつける方針を固めていた同区教委は7日、この方針を撤回することを明らかにした。
同区教委は、新たな方針として、各校からの申請に基づく予算査定では、「ランク付け」はせず、テスト結果の伸び率を大きな判断材料にすることにしている。

新たな方針では、A~Dの4ランクに分けるのをやめ、各学校から提出される予算の申請に基づいて1校ずつ査定する方法に改めるという。
学力テストの結果は、伸び率によって学校に加点する形で予算を上乗せする。
加点の点数はあらかじめ決めずに1校ずつ判断する。
学校へ配分する予算に学力テストの結果を反映する点は変わらないという。
同区教委は、さらに具体的な方法を詰める。

ランク付けする案が明らかになったあと、区教委には「学校格差を生む」などの意見が多く寄せられた。
撤回した理由について、内藤教育長は「Aは良い学校でDはダメな学校などと、誤解されやすい制度だなと思った」と語った。
各学校が独自の教育手法を実践するために予算に違いを付けるということには賛成であるが、それが学力テストのランキングで評価できるものなのか?という根本的なところが狂っていると感じる。

どうも事の始まりは、東京都の共通テストの成績が23区中で23位から21位ぐらいにあることが発端だったようだ。だから、学力テストの成績に応じてと考えたのかもしれないが、それならストレートに成功報酬にすれば良かろう。

義務教育段階でテストの成績ではなくて順位を行政が問題にする方がおかしいだろう。
さらには各学校は教育委員会の出先機関であって、管理者権限もほとんど無いわけでそれを各学校の責任として評価するというのでは、一部で話題になっている「教育委員会解体」論になってしまう。

とりあえず引っ込めたのはよいとしても、学力テストの伸び率に応じて予算配分に反映させるとなっているのは、そもそもこんな事をする合理性があるか?というところに踏み込まないと議論も出来ないだろう。

実際に高校に社会人講師として行っている立場から見ると、学力テストなどは子どもたちの教育の一部分でしかない、学力=テストの成績とみるから高校での履修偽装まで引き起こしてもテストの成績を上げようとするのだ。
学力向上を図ること自体は否定しないが、そのために他の事を切り捨てても良いのか?という問題の方が深刻だと思う。
韓国や中国の例を見ても子どもに勉強させるために他に何もしなくて良いといったことをやって社会問題と化している。

義務教育段階で行政が成績の順位争いに予算を付けることは根本的に愚かしい判断だと思う。

11月 8, 2006 at 10:36 午前 教育問題各種 | | コメント (4) | トラックバック (1)