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2006.12.14

Winny 判決

昨日(2006/12/13)は Winny 裁判の判決が京都地裁であった。
求刑が著作権法違反幇助で懲役1年に対して判決は罰金150万円であった。
金子被告は即日控訴した。

新聞の社説を集めてみた。

日経新聞社説   「技術も配慮したウィニー判決
読売新聞社説   「技術者のモラルが裁かれた
朝日新聞社説   「ウィニー有罪 開発者が萎縮する
サンケイ新聞社説 「ウィニー判決 開発意欲そがない議論を
毎日新聞社説   「ウィニー有罪判決 実態は変わらないむなしさ
東京新聞社説   「ウィニー判決 ソフト開発にも良識を

タイトルだけでも色々な社説があり、この裁判の影響が多岐に渡る複雑なものであることが分かります。
現時点では判決文の全文を見ていないのでわたし自身の判断は後にしますが、社説の中から注目するところをピックアップすると。

日経新聞社説より
ウィニーを巡っては防衛庁の機密情報が流出する事件も起きており、元助手の責任は免れないだろう。

2年前に京都府警が元助手をほう助の疑いで逮捕した際、技術開発を萎縮させるという批判の声が上がったが、判決は「技術を提供すること一般が犯罪行為になりかねない無限定な範囲拡大は妥当でない」と枠をはめた。

そのうえで、元助手が「著作権を侵害する状態で利用されるのを十分認識しながらソフトの公開を続けた」ことに違法性があると判断した。
技術開発の有用性を評価しつつ、技術を悪用した違法行為を抑止する点で、妥当な判決だといえる。
読売新聞社説より
技術者のモラルを重く見た判断と言えるだろう。

技術開発に当たって技術者は「暗」の側面を自覚する必要がある、というメッセージだろう。
ウィニーに限らない。科学技術の研究開発に携わる者にとって共通に求められるモラルだ。

今回の判決で技術者が委縮するという指摘もある。だが、同種ソフトの開発は止まっていない。心配は無用だろう。
朝日新聞社説より
運転手が速度違反をしたら、速く走れる車をつくった開発者も罰しなければならない。

そんな理屈が通らないのは常識だと思っていたが、ソフトウエアの開発をめぐってはそうではなかった。

新しい技術を生み出した者は、それを悪用した者の責任まで負わされる。
こんな司法判断では、開発者が萎縮(いしゅく)してしまわないか。納得しがたい判決である。

ファイル交換ソフトの開発者が刑事責任を問われたのは韓国と台湾で計3件あり、それぞれで1件ずつ無罪判決が出ている。
問題のソフトでは著作権を侵害しないよう警告しており、合法的な情報も流れている。
それが無罪の理由だが、こうした事情はウィニーも同じだ。
サンケイ新聞社説より
ソフトが悪用された場合、その開発者も刑事責任を問われるのか-。

弁護側は、「刃物を作った人が、その刃物が使われた事件の責めを負うのと同じ」と主張、終始無罪を求めてきた。
これに対し判決は、被告側に違法行為が行われるとの「十分な認識、認容」があれば、たとえ技術自体は中立的価値があるにせよ罪を問われるとの判断基準を示した。

その上で、ネット掲示板への書き込みなどから、被告が違法コピーに利用されると知りつつウィニーの改良を繰り返していたと認定しており、有罪の判断は妥当な流れといえよう。

ただ判決は同時に、ウィニーを「多方面に応用可能な有意義なもの」と認め、「技術の提供一般が犯罪行為となりかねないような無限定な幇助犯の成立範囲の拡大は妥当ではない」との判断も示している。
取り締まり当局にも一定の枠をはめ、健全なソフト開発の意欲まで阻害することがないよう慎重な対応を求めたものであり、バランスのとれた判断として評価したい。

しかし、今回のように被告の発言などから違法行為への認識を証拠立てられる場合はむしろ例外といえる。
匿名性が特性の一つでもあるネット社会では、たとえそれが明確な意図で行われた違法行為であれ、実行者の特定は極めて難しいのが実情だ。著作権問題にしても激しい変化に法整備が後手に回っている観は否めない。
毎日新聞社説より
判決は「利用者の多くが著作権を侵害することを明確に認識、認容しながら公開を継続した」と述べ、著作権法違反のほう助にあたると認定した。

著作権侵害は、映画などコンテンツ産業に大きな被害を与えている。断じて容認するわけにいかないし、ソフトウエアの開発者の倫理も問われている。

判決はネット社会のひどい現状に警鐘を鳴らしたとも言える。しかし、これによってネットでの著作権侵害の実態が大きく改善するかというと、そうならないだけにむなしさが残る。

新技術が後に及ぼす影響について、開発者が事前にすべてを予測することはできない。
元助手が逮捕され、さらに有罪と認定されたことによって、ソフト開発にマイナスの影響を及ぼすなら残念だ。

技術が先に進み、法制度が想定していない世界が誕生してしまったというのが、ネットの実態だろう。
元助手は即日控訴したが、著作権管理のあり方も含め、ネット社会に対応した仕組みを築くことが必要だ。
東京新聞社説より
判決は、「ウィニーの技術自体は有意義で、価値は中立的」と述べ、著作権侵害に悪用されなければ、社会に貢献するソフトとなる可能性を秘めていたと積極的に評価した。

しかし、元東大助手の金子勇被告が開発したウィニーが流通した結果は、あまりに破壊的だった。

何者かがウィニーに取り付くウイルスを開発してネット上に流したため、ウィニーを組み込んだパソコンから、個人情報や企業秘密が流出する事件が続き、情報流出の被害は警察、陸海空自衛隊、原子力発電所、学校など広範囲に広がった。

判決は、「被告はウィニーをホームページ上に公開し、悪用者の著作権法違反を容易にし、犯行をほう助した」と認定。
被告弁護団の主張も考慮したうえで、ソフト開発の自由と社会秩序のバランスを視野に入れ、社会秩序の方を重視する立場を取った判決といえる。

だが、デジタル技術が急速に進歩する中で、現状の著作権保護のあり方に再検討の必要性を訴える被告の主張には十分耳を傾ける価値があるのではないか。

控訴審では、検察・弁護双方の主張を通し、デジタル時代にふさわしいソフト開発のあり方を示す結論が得られることを期待したい。
いくつかの社説がウイルスによる情報流出を問題にしているが、これはちょっとひどいだろう。
現象面としてもセキュリティーホールによる情報流出が沢山あるわけで、別に Winny だからということではない。
むしろ社会に一般に誤解を生じさせるミスリードの可能性も高い。

それにしても、これらの社説は刑事裁判に対する評価と言えるのだろうか?大いに疑問がある。

12月 14, 2006 at 09:52 午前 セキュリティと法学, 事件と裁判 |

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Winny(ウィニー)はP2Pの技術を利用した、ファイル共有ソフトです。ファイル共有ソフトWinnyは、そもそも2チャンネルのダウンロードソフト版です。 続きを読む

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日記どころか月記、、下手すれば年記になりそうな当ブログですが、 ちょっと気になる... 続きを読む

受信: 2006/12/24 1:32:33

コメント

極論だが、
ウイニーがダメなら、巷のCD/DVDコピーソフト(フリー・製品版)もコピー機も複写をすることを目的に作られているから、ある人が違法を承知で使えば、ソフト・コピー機を作った人・発明した人も、彼と同罪なってしまう。

判決の論理を拡張して適用すれば、魔女狩り裁判になる危険性を含んだ判決が出たことになるのではないだろうか!。

投稿: 昭ちゃん | 2006/12/15 1:34:55

いや、この話のツボは、winnyでも著作権でもなく、マスコミが刑事訴訟に関する誤解を振りまいているという点にあると思われ。

投稿: apj | 2006/12/15 2:11:47

わたしはちょっと書いてますが、

    検察が起訴した場合に、明白に間違えていない限り有罪になる。
    Winny の利用は著作権法に抵触する場合はあった。

の二つで、有罪判決が出る可能性は高いと思っていました。

しかし全文が読めないので断定はしませんが、かなりヘンな判決のように思っています。
なんか刑事裁判として失格なのじゃないか?とすら思っています。

投稿: 酔うぞ | 2006/12/15 8:23:36

私は法律に詳しくないので、本判決の論旨がよく分からず、エントリを期待しています。
本エントリについては、各社記事とも判決の論旨がよく分かっていないような気がします。購読者がお金払っているんだから、もう少し本質的なところを・・・。
「何が争われて、どう判断された結果としての判決なのか」という個人的に刑事裁判の記事について期待している部分について十分書かれているとは思えません。
この判決に限りませんが、私など裁判・判決がよく分からない者が社説を参考にしてもこうなので、判決について解説してくれるサイト(ここを含め)は有難い存在です。
社説の流れからいけば、「開発者が幇助罪に問われない条件は」というところが一般人には明確でないところが問題点なのでしょう。

投稿: 北風 | 2006/12/15 13:02:30

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