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2006.11.30

パート労働法改正素案の問題

日経新聞社説より「パート社員の適正な処遇を急げ
パートタイム労働法の改正に向けた労働政策審議会の議論が大詰めにさしかかった。 29日に公益委員が示した報告書の素案は、パート社員への労働条件の明示、正社員との均衡待遇の確保、正社員への転換の促進などが柱だ。単なる指針から法令に格上げする規定も目立つ。

雇用者の4人に1人の割にまで膨らんだパートだが、賃金は正社員を100とすると男性52.5、女性69.0と低水準で、正社員への転換も容易でない。
経済的な不安定さや教育訓練の乏しさが、少子化や働き手の質の低下につながる恐れもある。
男女を問わず世帯主パートも目立つ今、働きに見合った形での処遇改善は重要な課題だ。

教育訓練や福利厚生に関する適正な処遇が義務規定なのに対し、賃金を巡る処遇の核心部分が努力義務にとどまった点には、不満も残る。
ただ強引に正社員並みに賃金水準を上げても、パートの門戸が狭まっては逆効果だ。素案の規定はクリアすべき最低ラインといえるが、一層の賃金の改善を目指すには雇用確保とのかねあいも考える必要があろう。

もう一つの焦点である正社員への転換については、転換推進に向けた措置を事業主に義務づけ、国の助成も促した。
ただ、パートも多様化しており、やむをえずパートになる層が増える一方、束縛を嫌う自発的パートもまた多い。正社員化だけを目標にするのでなく、働き手の事情に即したきめ細かい処遇が必要だ。

パート1200万人時代の裏には、不況下でグローバル競争に直面した企業が賃金水準の低さと調整弁的な便利さから雇用の非正社員化を進めた経緯がある。
その時点ではやむを得ない選択でも、景気回復後まで「安価な労働力」に抑え込んだままでは、社会の不安定化は増すばかりだ。
パート法改正は厚生年金の適用拡大などとともに安倍政権の再チャレンジ支援策の柱でもあり、厚労省は年内をめどに報告書をまとめ、来年の通常国会での法案提出を目指す。
格差の固定化を防ぐためにも、実効性のある処遇改善が待たれる。
この日経新聞の社説は割とよく踏み込んでいる方だと思う。
比較対象として京都新聞(共同通信)の記事「正社員へ転換推進義務付けパート労働法改正で素案」は、労働政策審議会の分科会が29日にあきらかになった素案を紹介しています。
パート労働法の見直しを検討している厚生労働相の諮問機関、労働政策審議会の分科会が29日、厚生労働省であり、学者らの公益委員が報告書の素案を示した。パートの正社員への転換推進を企業に義務付けたほか、処遇改善のため能力や経験を考慮して賃金を決めるよう求めた。

パートの処遇改善は、安倍晋三首相の掲げる再チャレンジ支援の柱の1つ。
素案は、既に策定した同法の厚労省指針で定める内容を法制化し、企業への拘束力を強めた。厚労省は素案を基に年内に報告書をまとめ、来年の通常国会で法改正を目指すが、使用者側委員の反発も予想される。

労働者側は「一定の前進」と評価するが、賃金など具体的な処遇改善は努力義務にとどまるため、格差解消への実効性に疑問の声も出ている。

素案はパートについて職場で中核的な役割を担うケースや若年層が増えていると指摘。
「日本経済を支える労働力としての重要性は高まっており、能力を有効に発揮できるようにすることが必要」として、社員と均衡が取れた処遇確保が「事業主の責務」と明記した。

正社員への転換では、企業は「推進に向けた措置を講じなければならない」と指摘。具体的には
  • (1)社員募集の情報伝達
  • (2)社員応募の機会の付与
  • (3)社員への転換制度の導入-の3つを例示した。
社員と仕事内容が同じで、長期間続けて勤務するパートに対しては「差別的な取り扱いを禁止する」と明示し、賃金などで社員と同水準の処遇にするよう義務付けた。

賃金に関しては社員との間に不当な格差がないよう仕事内容や能力、経験、成果などを考慮して決定することを要請。仕事の実態が社員に近いパートは、賃金の決め方を社員と共通にするよう企業は努力しなければならないとした。
このほか企業側に教育訓練、更衣室や給食施設の利用などの福利厚生の実施を求めた。
この社説と記事の元になった情報が「素案」であるのだが、素案が記事が紹介したとおりであるのなら通りいっぺんであり素案とはいえ突っ込みどころ満載と言えるだろう。だからこそ日経新聞社説は踏み込んで書いた。

簡単に言えば「同一労働同一賃金」をきちんと定義することが重要だろう。
パートと正社員を直接比較して「転勤があるパート従業員」とはどういうことなのだ?
転勤は会社の職務命令によるもので、パート従業員が労働形態の多様化としてパートを選択した場合に、それを踏みにじることにもなる。こんなことは法的に禁止して構わないだろう。

同一労働だが正社員には色々な事情があって賃金が違う、というのが使用者側の一般的な主張であるのだが、それならその「色々とは何か」をはっきりさせるべきだろう。
そうしないと「同一労働とは何か」が決まらない。同一労働で賃金格差があるという社会を是とするのであれば、賃金格差は何によって生じるのか説明する義務があるだろう。

労働と賃金といった極めて基本的なところにごまかしをしていると社会はドンドン不安定化する。
「日本経団連会長の発言は」で強く批判したのは、人材という資源を企業が育成しないで他社が育てた人材=資源をつまみ食いする構図を是認していることだ。

今回のパート問題についても、企業にとって賃金抑制だけすればよいのか?となると、将来の購買層を育てないのだから将来の経営者が挙げることが出来る利益をかっぱらっていることになる。

これでは、世代間格差じゃなくて世代間ドロボーだろう。
日経新聞社説が指摘している「景気回復後まで「安価な労働力」に抑え込んだままでは、社会の不安定化は増すばかりだ」は極めて重い。

11月 30, 2006 at 08:19 午前 国内の政治・行政・司法, 経済・経営 |

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