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2006.10.02

臓器移植法初の違反事件

読売新聞より「生体腎移植で提供者に金品、患者ら2人逮捕…愛媛

このニュースが最初に伝えられたときには、まるで臓器故買事件であるかのように伝わってきて、それも病院が斡旋したのではないか?といった感じだった。
「いくら何でもそれはないだろう?」と直感的に思ったのだが、犯罪容疑が臓器移植法の売買の禁止に違反しているというのだから「やはり故買なのかね?」とも思っていたが、読売新聞の伝えるのが真実であるとすると、これは法律で完全にコントールするのは難しいのではないか?と思う。
昨年9月に行われた生体腎移植手術をめぐり、患者らが臓器提供の見返りに現金30万円と乗用車(150万円相当)を女性ドナー(臓器提供者)に渡したとして、県警は1日、患者で水産会社役員と、内縁の妻の同社社長の両容疑者を臓器移植法違反(売買の禁止)の疑いで逮捕した。

また、同病院など計3か所を捜索、カルテなどを押収した。1997年の同法施行以来、臓器売買での摘発は初めて。

県警は同日、特別捜査本部を宇和島署に設置し、ドナーの女性からも立件を視野に同法違反容疑で事情を聞くとともに、病院側が臓器売買を認識していたかなどを調べる。

調べに対し、男性(患者)の容疑者は金品の提供を認めているが、臓器提供の経緯についてはあいまいな供述を繰り返している。
女性(妻)容疑者は容疑をほぼ認めているという。

調べでは、重い糖尿病だった男性(患者)容疑者は女性(妻)容疑者の仲介で、貸しビル業の女性から提供された左側腎臓の移植手術を昨年9月28日、同病院で受けた。
両容疑者は同11月、女性の口座に30万円を振り込み、今年4月に新車の乗用車を渡した疑い。
手術は成功し、患者は約1か月後に退院した。

女性(妻)容疑者はこの女性と知り合いで、女性から200万円を借りていたが、昨年8月ごろから「ドナーになってくれたら、借りた金に300万円を上乗せして返す。うちの人を助けたい」と再三、頼み込んでいたという。

県警は、今年2月に(腎臓提供者)女性から、「頼まれて手術を受けたが、貸していたお金や約束のお金も渡してくれない」との相談を受け、内偵していた。

男性(患者)容疑者は女性(妻)を妻、ドナーの女性を義妹と、病院に説明していた。
執刀した泌尿器科部長(65)は、読売新聞の取材に「きちんと提供者本人の確認はしていない」と話した。
この記事を読んだときに「話が逆じゃないのか?」と思って何回も読み直してしまいました。

腎臓を買った方が売った方に借金があった、というのです。

臓器売買を禁止するのは、借金のカタに臓器を売るのを禁止するといった意味合いが大きいでしょう。
一方、実際に全く謝礼を禁止して菓子折一つも出していけないとしても、厳守されることは無理でしょう。
そうなると、今回の事件は一体どういう事なのか?
形の上では、言葉巧みに臓器を詐取して口封じに対価を支払うと約束した、といった事が想像できます。
いずれにしろ、臓器移植法が売買の禁止を規定していて今回の事件では、それが破られたと認定することは問題がないと思いますが、そもそもの売買禁止の規定が想定している範囲の事件だったのか?となるとちょっとはずれているのではないか?と思います。

さらには、臓器移植は輸血のように提供者側が再生しないのですから、絶対的な判断が必要でそこに何らかの思惑やいきさつが全くないと考えるのは非現実的でしょう。

「メスよ輝け」というマンガがありました。
1989年から連載された作品で、中核は肝臓移植でした。

現実の脳死臓器移植が1996年の臓器移植法の成立をうけた、1999年のことですからこのマンガは10年先を描いていました。原作者は現役の医師で現場の立場からの議論が延々と出てくる作品で、印象深かったのは「親が子どもに臓器提供することが美談となると、世間が親に臓器提供のプレッシャー書ける可能性がある」というところでした。

これだけでも、実に色々な問題を含んでいることは明らかで、今回のような「借りている側が貸している側に臓器を提供させる」という想像外のことも起きる、ということなのでしょう。
詳細に調べて、例えば倫理委員会が調査して記録を残す、といったことも必要ではないでしょうか?

10月 2, 2006 at 10:53 午前 医療・生命・衛生 |

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» 愛媛県「臓器売買」事件の疑問 トラックバック 時評親爺
既報であるが、愛媛県で起きた「臓器売買」事件である。2日付エキサイトニュース・毎日配信及び同2日付共同配信他に依る。前者報道から以下に引用する(文中の太字・下線は筆者による)。 <臓器売買>山下容疑者、当初は息子に提供頼む   [ 10月02日 15時02分 ] 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)で行われた生体腎臓移植手術を巡る臓器売買事件で、臓器移植法違反容疑で逮捕された松下知子容疑者(59)が手術の約1カ月前、同容疑で逮捕された内縁の夫の山下鈴夫容疑者(59)について、「助かるには移... 続きを読む

受信: 2006/10/03 21:36:05

コメント

お疲れ様です。今回の関係者と直接の利害関係はないので自分との利害関係のある部分についての意見のみ述べたいと思います。警察の捜査費用と病院の医療費には私の支払った税金と健康保険料が使用されていると考えますが納税者と納付者に対するアカンタビリティー(説明の義務)は果たされるのでしょうか。関連する事柄ですが、マスコミは事件の発生は報道するが経過と結果は報道しない傾向があると私は感じますが、かって「ニュースステーション」では「過去の経過を短くまとめてあります」ということで「説明の義務」を果たしていたと思いますが、「報道の権利」に対して「説明の義務」を課す必要があるのではないでしょうか。

投稿: 田吾作 | 2006/10/02 15:51:54

田吾作 さん

どうもこの事件は、見かけもすごいですが、さらに何か事情がありそうです。
最初は弟に提供依頼したとか、借金はずーと昔で請求も放置されていたとか、ちょっと分からない関係のようです。

こんなことも含めて、ご質問に答える立場にはありませんが、報道について説明の義務というのは本質的に無いと思っています。

なぜなら、報道の説明をどこでやるか?が問題になります。
報道の説明を報道でやったら、そのまた説明を・・・・・となってキリがありません。

よって義務化は出来ないと考えます。
強いて言えば、その後明らかになった事情があれば、知らせるというのがありますが、それは報道機関の信用を維持するためのものであって、聞き手にとって直接的な意味は持たないでしょう。

投稿: youzo-y@nifty.com | 2006/10/02 19:10:50

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