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2006.04.24

掲示板管理者は共謀罪のリスクを負うのか?

「アイコラ・名誉毀損裁判判決」に奥村弁護士からトラックバックとコメントをいただきました。
判決書が待ち遠しいですね。
裁判例を眺めていると、管理者の刑事責任については
1 掲示板管理者の削除義務違反の不作為犯(正犯・幇助)
2 掲示板設置管理を実行行為とする作為犯(正犯・幇助)
3 投稿者との掲示板を介した共謀共同正犯
4 設置管理を幇助とする
(注記)奥村弁護士から「2とダブっている」とのことで取消線を入れました。
などの切り口があるようです。本件はそのどれないのか?
また名誉毀損罪の保護法益に関連して、いかなる事実を摘示したことになるのかという問題もあります。
わたしも「どういう理屈で、掲示板管理者が名誉毀損の正犯になったのか?」が一番知りたいところです。
奥村弁護士も同じご意見のようですが、法律家は全体として国会で審議が始まる「共謀罪」との絡みで特に最近のインターネットを巡る裁判での判決について危惧を感じているようです。

落合弁護士のブログより「暴走する(?)「共謀」概念
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20060417#1145282716 の中の「共謀共同正犯の意義と認定(出田孝一)」や、奥村ブログに接したりして感じましたが、共謀概念の主観化が、「希薄化」「形骸化」へと進んでいるようで、強く憂慮されます
落合弁護士のご意見は非常に濃密に書かれていて、是非とも本文をお読みいただきたいと思いますが、ポイントは以下のようです。
  • 実務上、「黙示の共謀」も共謀の中に含まれるものと考えられている
  • 謀議「行為」の存在ということに、あまりにも重きを置きすぎると、共謀共同正犯の本質を見誤ることになりかねない
  • しかし、「共謀」を主観面のものと捉えると
  • 主観面というものは、目に見えないものであり
  • 慎重な認定が行われないと、「共謀共同正犯として処罰したいと検察庁、裁判所が考えるもの」が共謀認定される
  • 共謀概念の希薄化、形骸化へ向けて暴走しかねない
  • ここにこそ、現在、反対論が巻き起こっている「共謀罪」の危険性が存在している
  • 非常に安易な共謀認定が行われるようになれば
  • 国家権力なり捜査機関が、特定の人間を共謀罪で葬ろうとすれば
  • いくつかの共謀の証拠らしきものをそろえることで
  • 簡単に逮捕、起訴し、有罪にする、ということができてしまいます。
  • インターネットの掲示板運営者と投稿者が、相互に何の人間関係もなく、
  • 単に、掲示板の運営と投稿、という点でしか接点がなくても、
  • 「合意」が認められ共謀認定がなされるという
  • 共謀がそこまで希薄化してしまった世界では
  • 何らかの接点があれば共謀が認定されるという、考えてみれば恐ろしい事態が頻発しかねないでしょう。
直感的には「裁判所はそこまで無茶なことをするか?」と思いたいところで、落合弁護士は現役裁判官の論文にその危惧は十分にある、と論じています。
上記の論文は、現役裁判官によるものですが、共謀概念のそういった危険性に思いを致した形跡は皆無で、
感じられるのは、職業裁判官による共謀認定への絶大な自信であり、上記のような最高裁判例の出現に、よく「強気の刑裁」などと司法修習生に揶揄されるような、
裁判所による一種の独善的な事実認定が今後もその傾向を強め、そこに共謀罪が法制化されるようなことになれば、
確かに、恐ろしくて言いたいことをやりたいこともできない、という治安国家化、警察国家化、ということも、単なる杞憂では終わらないかもしれません。

かつては、こういった危険な流れに対し、いろいろな歯止めとなる勢力があり、国民の支持もそれなりにあって、バランスがとれていた側面もあったように思いますが、
最近は、世の中の流れも変わってきて、必ずしも危険性等に思いが致されることなく、スローガン的な部分に目を奪われてある方向に一気に流れてしまう、という傾向が出てきているような気がします。

かつて捜査機関に身を置いていたものとして、犯罪を的確に処罰し国民の平和な生活を守る必要性は強く認識していますが、「まず処罰ありき」といった傾向には、強く疑問を感じますし、「共謀」の問題(共謀罪の問題を含め)についても、問題意識を持って今後とも検討して行く必要性を感じます。
確かにこういう考察を見ると「さすがに専門家」と思いますし、わたしが素人ながら「この判決はなんだ?」と感じるのもまんざら根拠のないことではない、と分かってきてありがたいことです。

ところで、別の視点からちょっと気になることがあります。
いわば換骨奪胎とでも言うのでしょうが、鈴木正朝新潟大学教授が「法律を実態だけに合わせると、理論的なつじつまが合わなくなる」といった事を述べられていて「なるほど、それが個人情報保護法の混乱の元か」と思ったのですが、共謀罪については元々はアメリカ同時多発テロ(9.11)以来の、アフガニスタン・イラク侵攻の引き金になった「テロ対策」のいわば超法規的・超文化的(グローバリズム)にアメリカが世界に押しつけたものだと理解しています。

アメリカの超法規的な無理は、グアンタナモ基地への強制収容が国際的に破綻しつつあることなどからも明らかで、全体として法的秩序の再構成といったところに向かっていると感じます。
だからこそ

「今ごろになって共謀罪を推し進めるとはなぜだ?」

と感じますが、これも誰が「都合良く利用してしまおう」としているのではないか?それもインターネット規制の方向で考えているのではない?と強く思います。そしてインターネット規制を是としているのは、主にマスコミではないか?と思うのです。
EFF(Electronic Frontier Foundation)を作らねばなりますまい。

4月 24, 2006 at 10:30 午前 セキュリティと法学 |

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コメント

 「4 設置管理を幇助とする」は2とダブりました。
 奥村が目にした管理者の責任は3通りです。

投稿: 弁護士奥村徹(大阪弁護士会) | 2006/04/24 10:36:30

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