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2006.04.10

米国牛輸入で・リスク評価を

ニッポン消費者新聞より「米国BSE対策の実態を踏まえ独自に再度リスク評価を」=「委員半数辞任問題」で消費者団体が松田担当大臣などに申入れ

ニッポン消費者新聞のWebは新聞記事の概略だけですので、細かいところは分かりません。
関連記事はニッポン消費者新聞4月15日号に掲載予定、となっています。
日本消費者連盟に事務局を置く「食の安全・監視市民委員会」や主婦連合会などの消費者団体は食品安全委員会「プリオン専門調査会」の「委員半数辞任問題」を重視し、米国のBSE対策を踏まえ「改めて米国産牛肉のリスク評価を実施すべき」とする申し入れを食品安全委員会・寺田委員長と食品安全担当・松田大臣に提出した。 これまでの調査会での検討について「輸入再開を前提にしていた」とする指摘が辞任委員から提起されたため。
アメリカ産牛肉の輸入に関する問題はかなりワケの分からない経過を辿って、遂には「プリオン専門調査会」の「委員の半数辞任」問題になってしまった。
そこで「リスク評価の実施」という意見が出てきたのだろうけど、元は「日本の全頭検査」と「アメリカの目視検査」との対立が解消しないからだろうと思います。
「リスク管理」という言葉だけでは「BSEの牛が市場に出てしまうリスク」なのか「異常プリオン部位の流出のリスク」なのか「BSEによって人がクロイツフェルトヤコブ病に感染するリスク」なのか分かりません。
これについて整理した記事が中西準子先生の「環境リスク学」に出ています。

アメリカの牛の生産量 年間4000万頭
そのうち1/40の100万頭が日本に輸入される。
アメリカでのBSE発見の率から推定すると、年間4000頭がBSEに汚染されている
そこで、実際の汚染率が400頭、4千頭、4万頭の3段階、
危険部位除去作業後の残留率を1%、5%、10%、100%(除去せず)
検査の程度を、無検査、全頭検査、1%(40万頭)の検査
といったパラメータで計算しています。説明として次のようになっています。
無検査、年間400頭汚染、異常プリオン残留率1%では、日本では1年間で0.1頭分の以上プリオンが市場に出ると計算されるそうです。これはアメリカの方式ですね。
これに対して日本での方式を適用計算すると、全頭検査を実行、年間400頭感染、異常プリオン残留率1%と同じ条件では、0.001で全頭検査は無検査の1/100になります。
確かに検査を強化することでリスクが減ることは間違えないが、どこまで減らすべきか一頭分の異常プリオンは大問題なのか?と中西先生の説明はクロイツフェルトヤコブ病のリスクに進みます。
どのくらいの異常プリオン量なら受容できるかを考えてみよう。米国牛を100年間食べ続けて、vCJD の発症が一人以下を目標にした場合、米国からの以上プリオン量が年間10頭相当量程度ならいいということになる。
米国牛の年間4000頭が感染し、異常プリオン残留率が10%以上だと10頭相当になるので条件を満足できない。
対策として全頭検査をすれば、条件を満足できる。
100年間の全頭検査の費用を2000億円とすると、0.001人弱の命を救うために2000億円をかけることになり、全頭検査によるリスク削減対策の経済効率は極めて低い。

したがって、日本が米国に要求するべきは、米国ではBSE感染牛が年間400頭、4000頭、4万頭のいずれのレベルにあるのか、また、危険部位除去はどこまでできるのかをはっきりさせることで、とるべき対策が決まるのである。
元データは累積値として5万7千頭((0.001%)を検査して1頭が陽性、から出発しています。
アメリカは検査数を今後0.1%(4万頭)にすると言っていますが、全頭検査(100%)を主張する日本との意見の差が問題になっています。
これについて中西先生は、年間40万頭(1%)を検査(10倍にする)しても、無検査で異常プリオン残存量が10頭当量に比較して9.901頭当量であってほとんど減少しない。
と指摘しています。


なかなか大変な話だとは分かりますが、詳しくは「環境リスク学」をお読み下さい。
つまり「リスクの検討を科学的にやっていないのでは?」ということが委員の半数辞任の背景にあるようですが、与えられた条件の中で判断するのが科学者の仕事、という見解もあるようです。
しかし、どうも「環境リスク学」的な検討をしていないのではないでしょうか?中西先生も「アメリカはもっとちゃんと説明するべき」と書かれています。

いずれにしろ「きちんとリスク評価をするべき」というのは当然のことですね。

4月 10, 2006 at 10:43 午前 医療・生命・衛生 |

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コメント

こんにちは。

自分たちの望む結果と違うから、再度評価すべき…そんな意見ぢゃなければ良いですね。

結局のところ、リスク評価に使用した各種パラメータ、計算式もハッキリ判るように公表しないとダメなんでしょうねぇ。

投稿: com | 2006/04/10 12:07:45

com さん

そりゃはっきり言えば「リスクって何考えてるの?」ではありますがねぇ。

このところというか継続して1年ぐらい韓国の新聞社のニュースを読んでますが、段々わかってきたのは論理と感情のそれぞれの価値をどう評価するのかというモノサシの違いがあるのだな?ということです。

実はこのことで今ごろになって分かって来たことが、社会のモノサシは一つではない。なんですね。

論理的とか理論的な説得が感情的な面を納得させることが出来るのか?というと、それは確実ではない。

米国牛問題はほんどが感情的と言って良いでしょうから、理論的な説得では解決しがたいだろうとは思います。
どうなるんでしょうかね?

酔うぞ拝

投稿: 酔うぞ | 2006/04/10 17:17:47

こんばんは。

現在、行政側が国民に対して開示している情報って、「行政側が伝えたい情報」であって、「国民が知りたい情報」では無いと思うのですよ。この問題に限らず。場合によっては、専門家も含めて、「これ以上の情報は知る必要がない」と、バイアスをかけてる時もあるようですし。

某掲示板で織 朱實さんの小論を紹介しましたが…

http://www.i-foe.org/bbs/treebbs.php?mode=oneres&no=737&num=737&page=1&k=1

結局のところ、行政の言っていることが信用できない、っていうのは、メディアがそう言う論調だってのもあるでしょうが、自分たちの情報発信の不備が戻ってきているだけなんでしょうね。

時間をかけてでもいいから、行政は国民に対して、結論に至までの経緯を、国民が望む形の情報で開示して欲しいですね。

個人的には、アメリカ産牛肉によるBSE→vCJDのリスクより、牛肉(どこの国の牛肉でも同じ)を食べて成人病になるリスクの方がはるかに高いと思うのですがね^^;

投稿: com | 2006/04/11 18:18:25

ぁぁ…リンク先を紹介したのに…引用するの忘れてたorz

織さんによると、リスクコミュニケーションの変遷として4段階あるそうです。
その分類によると、今の日本は二つめくらい…情報発信者が発信したい情報のみを発信する…にあるみたいですしね。

この状況を、情報受信者が欲しいと思っている情報を発信する、に時間をかけてでも変遷するチャンスだと思います。

以上、補足でした^^;

投稿: com | 2006/04/11 18:22:31

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