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2006.03.02

裁判員制度と自白調書

元検弁護士のつぶやきさんの記事「身柄拘束と自白」にトラックバックしました。
タイトル通りで、自白について論じています。
この問題を考えるときによく語られるのが、「百人の罪ある者を逃がしても、一人の無辜を処罰してはならない」という言葉です。
正論です。
理念としては反駁できません。
しかし、
「千人の罪ある者を逃がしても、一人の無辜を処罰してはならない」ではどうでしょう。
「一万人の罪ある者を逃がしても、一人の無辜を処罰してはならない」では?
「百万人の罪ある者を逃がしても、一人の無辜を処罰してはならない」では?

極端な例かもしれませんが、百万人の犯罪者を逃していては治安維持も何もありません。
犯罪者天国になってしまいます。

そして、被疑者の自供なしには十分な証拠が収集できない事件はいくらでもあるのです。
そして、在宅捜査では、自白が得られない事件、罪障隠滅し放題になる事件もいくらでもあるのです。

真犯人をきちんと処罰する、ということと、冤罪を絶対に出さない、ということは刑事司法に本質的に内在する矛盾です。
結局、この矛盾する要請をどのように折り合いをつけるかが刑事司法制度論であると考えます。
この通りなのでしょう。わたしは自白問題について裁判員裁判とセットにして考えています。

裁判員制度については「裁判員制度の紹介」が適当だと思いますが、3年後には始まります。
裁判員裁判になる事件は「死刑を含む刑罰に相当する事件」となっていて、これだけで平成16年(2004年)の統計で3308件だそうです。

また、裁判員裁判は第一審だけですから地方裁判所だけで開かれることになります。そこで、地裁別の3308件の実績がどうなっているのかを並べてみると、東京、大阪、名古屋、千葉、横浜、福岡、さいたま、神戸、水戸、宇都宮、静岡、広島、京都の13地裁でほぼ70%に当たる2269件の事件を担当しています。

地方裁判所は各県に一つずつあるのが原則で、北海道だけ札幌、釧路、旭川、函館と4つあります。
裁判員は選挙人名簿から選ばれるとなっているので有権者は誰でも裁判になる可能性があります。一つの裁判では正式な裁判員が6名で予備が6名決定するそうです。合計12名を選ぶために有権者から30名を指名すると仮定すると、平均すると上記13の裁判所のある都道府県では年間に0.1%ぐらいの人が裁判員候補になる計算です。

有権者として50年間は裁判員に指名される可能性があるわけで、生涯では5%の確率つまり20人に一人は裁判員に指名される可能性があることになります。

思っていたよりも裁判員になる可能性は高いわけで、わたしは「自分が裁判員になったらどうするか?」を考えてみました。
「自白調書」をどう判断するか?ですが、裁判員裁判ではかなり短期間で判断をしなければなりません。
現在のところ裁判は「証拠を総合して判断する」こともあって、莫大な書類が出てきます。とても1日で読むなんてことは不可能です。裁判員裁判では「証拠を総合して判断するために、十分に証拠を読み込むことが不可能だ」となります。

自白調書しか無く、その自白調書がどのようにして作られたのかが分からない場合にどうします?
別に自白調書でなくても鑑定書によって判断しなければならない場合に「この問題の権威の鑑定です」というだけで、鑑定者の判断の正否を決めることが出来るでしょうか?

裁判員裁判にすると裁判官以外の社会の専門家が裁判に関わる可能性があるので、鑑定書に反論する裁判員も登場する可能性はあります。

これら「前提の説明抜きで信用するのか?」は簡単に言えば「プロの仕事は信用しよう」ということで、逆に専門家からは「素人は知らないでよろしい」ということでもあります。
裁判員制度は正に「素人が参加する」なので、ここらの「専門家にお任せ」や「素人には分からないでしょうが」では裁判員裁判にする意味がありません。

「素人に分かるように説明する」ことが要件で、自白調書だけでは「なんだこの紙切れ」という判断になっても仕方ないでしょう。「じっくり読んで、全体像を理解すれば分かります」なのでしょうが、そのじっくり読む時間が無いのだから、それもダメですね。
この点からは「自白調書は良く分からないから証拠採用しない」とわたしは決定するだろうと思います。
こんな問題にしないためには「取調の可視化」と言いますが、取調の録画を提出する、といったことが不可欠であろと思うのですが、どうもこの方向には進まないようです。

3月 2, 2006 at 12:47 午後 裁判員裁判 |

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