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2006.02.10

個人情報漏示罪を追加

朝日新聞より「個人情報保護、漏洩社員に罰則盛る 与党の改正原案
自民、公明の与党が作成した個人情報保護法改正案の原案が9日、分かった。個人データを外部に漏らした民間企業の社員らに対する罰則規定として「情報漏洩(ろうえい)罪」を新設。

原案では、民間企業の社員らが第三者に個人データを不正な利益を図る目的で提供した時は「1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処する」との罰則規定を追加。この規定について「日本国外で罪を犯した者にも適用する」との条項を加えた。金融機関などで相次いでいる顧客情報の流出を防ぐのが目的だ。
こんなムチャクチャな法律はダメでしょう。
だいたい個人情報保護法も問題だらけです。
個人情報が財物と同じか?という問題が元々あって、わたしは「保護するべき個人情報」を決めないと個人情報保護法自体の成立が難しくなる、という側面を指摘しています。

個人情報を全く知られないというのは「人間じゃない」という意味になりますから人間であり社会生活をするのであれば「ある程度の個人情報は社会つまり他人に知られるべきモノ」です。

これを「個人情報を個人所有の財物として扱う」という大誤解をしているのではないでしょうか?

もちろん名簿を持ち出して売り飛ばして収入を得るなんてのは刑事的処罰をするべきだと思いますが、それは「個人情報だから」なのか?

もともと個人情報保護法が全国民に課せられる理由が、住基ネット問題から発していることでした。
住基ネットは住民基本台帳をネットワーク化することで、行政が管理できない民間に端末が開放されるから、民間端末から住民基本台帳のデータが流出した場合などに法的に追跡できないのは問題だ。
という話から始まったのだそうです。 この意見の基本は「行政の外に情報を出さない」という意志の表れでしょうが「それでは個人情報保護法を作ります」となったのです。

個人情報について法的対応が出来ないものか?というのはプライバシー問題などで以前から論じられていましたが、ネットワーク時代になって一気に重大視されるようになり、そのために法学的にかなり歪んだ形で個人情報保護法が出来たと判断しています。

個人情報保護法についてわたしは2002年ごろから騒いでいて、その過程で当時ニフティ社の法務部に在職していた鈴木正朝・新潟大学教授に法学的な側面についてレクチャーを受けて理解しました。
話はこんな短いコラムでまとまるような簡単なものではありませんが、個人情報漏示が刑事処分に値する犯罪性がある、つまり社会的に罰するべきだとなるためには「だれが損害を負ったのか?」を明らかにする必要があると思いますが、現在起きている個人情報流出事件で刑事処罰を必要とする損害が発生しているのでしょうか?
「オレオレ詐欺とかあるじゃないか!」という指摘はあると思いますが、これは「住所・氏名などが知られたから」起きたことも多いわけで「ある特定の個人情報流出事件が、刑事処分に値するほどの損害を及ぼす事件そのものか?」という問題のハードルは恐ろしく高い、証明はほとんど不可能です。

銀行のキャッシュカードの暗証番号の流出といった事件でないと「保護されていて当たり前の情報」ではないですよ。
いずれにしろ、個人情報の流出が何かの犯罪に利用されて損害が発生し、というのが普通の流れでしょうから、個人情報を流出(漏示)した人物が犯罪目的のためにというのが処罰の対象ですが、犯罪が実行されない時に「犯罪目的で漏示した」なんてのは法的論理は明らかにおかしい。
それこそ「包丁を売ったから殺人の共犯」のような論理であると思います。 ムチャクチャだよ。

2月 10, 2006 at 09:23 午前 個人情報保護法 |

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