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2006.01.28

インターネットに書かれるから証言拒否や追加訴訟

昨日(1月27日)は横浜地裁で「中西 vs 松井」裁判を午前10時半から傍聴し、午後1時半には東京地裁で「平和神軍刑事事件」裁判を傍聴しました。
この二つの裁判は、民事事件と刑事事件(民事は判決が確定している)の違いはありますが、共にインターネット上の日記(中西先生)HP(平和神軍事件)で書いた内容を名誉毀損であるとして事件になったものです。
たまたま昨日はこの二つの全く関係の無い事件で同じ問題が持ち上がりました。

平和神軍事件では、検察側証人の尋問の3回目があったのですが、前回から証人が「インターネット上に面白おかしく書かれるから証言できない」と証言拒否を繰り返し、前回は裁判長が「インターネット上で扱われるから証言出来ないというのは理解出来るから、ケースバイケースで」と一見して「インターネット上に裁判の情況が伝わることを証言拒否の理由に出来る」と取れるような発言をしたので、わたしは問題であるとして取り上げました。

わたしは個人的には「裁判をやってそれがインターネットに取り上げられるのは大変だな」と思うので、ある程度はこの種の苦情があることは理解できます。
しかし裁判は公開なのだから、証言拒否はもちろんインターネットで取り上げられるのも仕方ないし裁判という社会的なリスソースを使うことのコストであろうと思っていますから「我慢しなさいよ」という立場です。

昨日「中西 vs 松井裁判」で原告側弁護士が驚くべき発言をしました。
産総研の中西先生が京都大学の松井教授のシンポジウムにおけるプレゼンテーションの内容についてインターネット上の個人の日記(雑感)で批判したことで「名誉毀損である」と損害賠償請求が起こされたので、わたしが名目上ではありますが「インターネット上の表現の自由を考える会」に深く関わっている関係からも「この裁判では中西先生を応援する」として山形大学助教授の apj さんと共に「環境ホルモン濫訴事件:中西応援団」というサイトを作って、裁判の様子を伝え、中西先生を応援する立場で傍聴に多くの方の参加をいただくように呼びかけるなどの活動をしています。

この活動は名誉毀損事件が提起されて裁判が始まってから始めたものですが、この種の動きが原告側にプレッシャーを与えるであろうことは承知しています。
しかし、元々裁判と言うものは「ある時点で区切って考える」ですから、裁判が始まった後の問題をその裁判に取り込むことは裁判を混乱させるので御法度というべきものでしょう。
ところが、原告側は apj さんの記事を証拠として提出しました。

つまり裁判の内容を批判したインターネット上の記事をその裁判の証拠として提出したというもので、裁判の範囲を広げる方向に動きました。
これに対して昨日は被告側弁護人の弘中弁護士が「後からの話を持ち出すべきでない」と述べたのに対して、原告側弁護人は追加の訴訟あるいは別の訴訟を起こす、と宣言しました。

この将来の訴訟とは「元の裁判について、報じるインターネット上の記事が問題だから訴訟する」というもので、「環境ホルモン濫訴事件:中西応援団」に責任者として名を連ねている apj さんと酔うぞには、訴訟を起こされる可能性が出てきました。


最初に述べたように、裁判を起こしてみたらインターネットに逐一報告されるというのは今まであまり例の無いことだったのだ、と改めて気づきました。
裁判の内容が社会に伝わるのは、多くは新聞・テレビなどの報道で最近まではこれ以外の方法が無く、幾つかの事件で記者会見で被害者が積極的にマスコミに情報を出す、といった手法が珍しいくらいでした。
この数年はインターネットの普及で裁判の当事者がHPで社会に知らせるという手法が出てきて、わたしが関わっているものとしては「ホームオブハート事件」「DHC事件」といったものがあります。

裁判の原告・被告といった当事者になってしまうと、情報を多く出すことで相手側からの反撃を受けることもあり、当人が当事者の裁判記録のHPはあまり活発には出来ません。
その点「傍聴してインターネット上に裁判の様子を出そう」というのはごく最近の動きといって良いようですが、専門に裁判傍聴を扱っているサイトや記事なども出てきています。

これは当事者にとっては「新聞に報道されるのはたまらないが我慢するか」で裁判を始めてみたところ、インターネットで報道され、特に関係者がネット上ではそばに居ることを考えるとインターネット上に裁判記事が出ることは新聞に報道されることの比ではないと容易に想像できます。

裁判傍聴記をインターネット上に公開することは傍聴人の大幅拡大に等しく、わたしも含めてこの種の記事を出す方が増えているのは裁判員制度を考えて裁判の実態を見て記事にしよう、といった方が多くなったからでしょう。
つまりはインターネット上での裁判の経過報告は今後増えるでしょうし、記事の書き方によって問題になるケースも出てくると思いますが、それでもこの方向はより拡大するだろう。と考えています。

1月 28, 2006 at 12:21 午後 |

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