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2005.11.10

医療事故裁判・内部告発者が敗訴

朝日新聞より「内部告発者が逆転敗訴 日本医科大の患者死亡事件
手術で第1助手を務めた男性医師(47)が、死亡した患者の遺族や報道機関に「手術でミスがあった」と内部告発したために名誉を傷つけられたとして、日本医科大学(東京都文京区)と執刀医が、この医師を相手に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が9日、東京高裁であった。江見弘武裁判長は、請求を棄却した一審判決を変更。「告発内容は真実ではなく、真実と信じる相当の理由もなかった」として違法性を認め、医師に計550万円の支払いを命じた。医師側は上告する方針。
この事件は2005年1月31日付けで書いた「医療事故裁判で患者側が敗訴」のもう一つの裁判のさらに控訴審の判決です。

報道を整理すると、
●1997年12月15日、川に転落してしごの骨を骨折した女性があごの骨をワイヤーでつなぐ手術を受けた

●高熱や下痢などの症状が出始め、同17日に多臓器不全で死亡した。

●その後、手術に立ち会った医師(46)が両親に「あごの骨にワイヤを入れて固定する際、ワイヤが脳に刺さった」と告白したため、両親が2001年5月に提訴。

●大学側は「脳に刺さっていない」と反論していた。

●上記裁判の判決は、内部告発をしたことになる立ち会った医師の証言を否定して、患者家族側の敗訴となる

●執刀医は内部告発をした医師を名誉毀損で提訴

●第一審では執刀医の敗訴。このために患者家族側敗訴の裁判とは事実認定が反対になってしまった

●執刀医は高裁に控訴して、今回の勝訴となった。

●敗訴した内部告発した立ち会った医師は上告の方針
この事件の興味深いところは、元々の内部告発で「ワイヤーが脳に刺さったのが原因げ死亡した」としたのに対して裁判では事実関係の評価がアイマイであるように見える点です。2005年1月31日に「医療事故裁判で患者側が敗訴」をわたしが書いた最大の理由は
片山裁判長は、「ワイヤが勢いよく頭の中に進んだのを見た」とする医師の法廷証言についても、「ワイヤは少しずつしか進まないはずで、信用できない」と否定した。
という点で、大変に物理学的な現象について「進まないはずで」というのはどういう事だ?と思ったからです。
今回のもう一つの裁判でも事実関係の争いはあったのでしょう。そして名誉毀損裁判第一審では事実認定は「ワイヤーは脳に刺さった」といったものだったのでしょう。だから執刀医は控訴した、高等裁判所の判決は
医師が根拠とした手術中のX線写真について「画像が不鮮明で、ワイヤが刺さっていると積極的に裏付けるものとは評価できない」と述べた。
う~む・・であります。この種の裁判で「積極的に裏付ける証拠」というのをどう考えるか?ですね。「刺さっていないと推測できる、その証拠は」といったレベルの判断の方が正当ではないでしょうか?なんか報道から受ける印象は裁判所が思っている事態と違うからそんなことが起きるというのなら証拠を示せ、と言っているように感じます。もっと積極的に事実の解明が必要だと思うし、鑑定能力を高くするとか裁判外での専門家の判定を求めるといったことが必要ではないか、と思います。
航空機事故の解明がうまく出来ない、よって事故の再発防止に役に立たないといった批判も有名ですし、東名高速の裾野近辺の上り線での事故多発が道路を改修したら一気に激減したのに、それまでの事故で道路構造が原因とされたことがほとんど無いといった、事故といったものにすらタテマエと本音があるようなのは大変にまずいことだと思います。


【追記】読売新聞には
1審は「手術ミスはなかった」とする一方、「ミスがあったと郡家医師が信じる相当の理由があった」として、名誉棄損を認めなかった。これに対し、2審も1審同様、手術ミスを否定した上で、「手術ミスと矛盾する事実があったのに郡家医師が検証していない」と指摘。「手術ミスを信じる理由があったとは認められない」と結論づけた。
とされています。
いや、だから「ミスがあった」「ミスが無かった」という判断が1審と2審で分かれていることが問題だと、言いたいのであって「何が起きたのか」をちゃんと説明してから「それはミスだ」「ミスとは言えない」と発表して欲しいのだ。
この一連の裁判で、どうも報道にその細かい点が出てこないのが非常に気になります。

11月 10, 2005 at 02:14 午前 事件と裁判 | | コメント (0) | トラックバック (1)

2005.11.09

記者クラブ裁判・ひどい判決

フリージャーナリストの寺澤有氏が警視庁記者クラブで開かれる記者会見に当事者として参加して質問をしたいと記者クラブに申し入れたら断れた、ということから記者クラブとはなんで、記者会見はナンなのだ?という裁判を起こしていました。
その判決が出たのですが、当然のようにニュースになっていません。
寺澤有氏がプログで発表しています。
かなりひどい判決だと思います。
債権者 寺澤有
債権者 舩川輝樹
債権者両名代理人弁護士 堀敏明
同 山下幸夫
債務者 国

中略

債務者 株式会社産業経済新聞社
債務者 株式会社日本経済新聞社
債務者 株式会社テレビ朝日
債務者 警察庁記者クラブ
同代表者幹事 不詳

主文

本件申立てをいずれも却下する。
申立費用は、債権者らの負担とする。

理由

第1 申立ての趣旨
 債務者らは、東京都千代田区霞が関2丁目1番2号所在の警察庁庁舎内において、債権者らが、警察庁長官との懇談に使用する会議室・記者室に出入りして取材することを妨害してはならない。
あらま(^_^)山下幸夫弁護士だ。

正確性に欠けるかもしれまはせんが、背景説明をします。
記者クラブは排他的な組織で、そこで記者会見という公式発表が行われるのは問題だ、という声が以前からあります。
中央省庁の記者クラブは基本的に日本新聞協会会員だけが入れるようです。
会員各社を見ると新聞と放送局・通信社だけで報道として大きな市場を持っている雑誌社(週刊誌)がありません。
ましてフリーの記者とかブロガーなんのては相手にされてません。

アメリカではブロガーに取材の権利があるとされたようです。つまり報道・取材・記者会見とはどういう意味なのだ?ということがブログジャーリズムという分野で盛り上がっています。
今回の裁判では「記者会見を一部の記者だけに制限する根拠があるのか?」という争いであったようですが、判決はこのようなことを言っています。
漆間〈巌警察庁〉長官は、定例の記者会見を行っていないが、原則として、毎週木曜日の午後、当日午前に開催される国家公安委員会の開催状況を説明するため、債務者記者クラブに所属する記者らと懇談する機会を設けており、〈中略〉債務者会社らが本件懇談会において漆間長官が発言した内容を報道する際、「(定例)記者会見」による旨の表現を用いることがあるが、これは一般読者及び視聴者に分かりやすく伝えるための便宜上の表現に過ぎない。
本件懇談会は、国家公安委員会の開催状況等を迅速かつ正確に国民に伝えるため、便宜供与として行われているものであるから、本件懇談会を行うかどうか、その対象者を誰にするかなどについては、漆間長官の裁量に委ねられているというべきであって、債権者らが、警察庁庁舎内で開かれる本件懇談会等の取材機会に出席する権利を有するとは認め難い
つまり「記者会見は公式の発表ではない」とも取れるようなことになってます。
大体「取材する権利を有する」ことが取材の条件というのは、いささかヘンではないか?「取材を断られるもっとも理由がある」というのが取材制限の理由であるべきではないだろうか?
「取材の権利」という概念を認めることは「会見側に反対する記者は取材出来なくて当然」ともなってしまう。この裁判官はこういうことまで考えてこんな判決を出したのか?

11月 9, 2005 at 05:18 午後 事件と裁判 | | コメント (1) | トラックバック (0)

2005.11.07

パリじゃなくてフランスが燃えているのか

CNN.co.jpより「シラク仏大統領「治安回復が最優先」 暴動取締強化を表明
シラク大統領は6日、パリ郊外から国内各地に拡大している移民系若者らによる暴動について、関係閣僚の国内治安対策会議を緊急開催し、治安回復を最優先し、取り締まりを徹底すると言明した。
今までの騒乱拡大がサルコジ内相の強硬姿勢に対する反発という見方があったのだが、シラク大統領も取締強化を主唱するとなると、ますます先鋭化した対立になるのではないか?と思ってしまう。
なにしろ、こんな情報が出てきている。
内務省によると、西部ナントでは幼稚園が放火された。
内務省によると、6日は午後11時までに1日で車365台が燃やされ、50人が逮捕された。10月27日に暴動が始まって以来、燃やされた車は3300台に上るという。
幼稚園に放火するとか、一日数百台(千台という説もあり)も車に放火されるというので、内乱だとすら言えるだろう。
観光にも影響が出てくるだろうし、政情不安と評価されれば投資などにも問題が出てくる。ヨーロッパ各国で移民問題に苦労しているところを見ると、日本の少子化問題解決に移民を考えるにしても慎重に長期的な視点で判断しないと何十年か後にトンでもないことになるかもしれないということですね。

11月 7, 2005 at 11:53 午前 海外の政治・軍事 | | コメント (0) | トラックバック (0)

オークションのニセモノを錯誤・返金というが

町村先生のMatimulogの記事「オークションで偽物をつかまされ、錯誤が認められた事例
東京簡判平成17年6月16日
・このオークションサイトではコピー商品の出品が禁止されていた
・正規メーカー名で検索できた
・正規メーカーのロゴとともに、またその刻印がはっきり見えるように、写真で表示されていた。
・取引価格は正規品と同じか少し安いくらいだった。
以上の条件で、要素の錯誤であったと認めたものである。
どうも出品者は「本物かどうか分からない」といって出品したが、刻印などが明確に見えていたので、購入者は「本物だと信じて購入した」ということで、結果としてニセモノだから錯誤であって、返金せよという判決になったようです。

確かに錯誤だから買い手が思ったモノと違う、ということなのでしょうがそれが「本物だと思った」では逆の見方をすると出品者がニセモノを出品したから、となって「詐欺問題」と紙一重という感じですね。ちょっと微妙な判決ですね。

錯誤買い受けだから、返金せよという判決はなんか無理を感じます。
まぁ実態に基づいて判断するべきだから色々な要素があると思いますが、このオークションサイトを対象に考えると、コピー商品の出品禁止なのだから「これは間違えなくニセモノです」という出品はできず、だからと言って「本物かどうか分かりません」では後から「本物だと思って買ったが調べたらニセモノだから錯誤返金」となっては出品者は「間違えなく本物です」という品物しか出せないことになってしまって、本物だけど証明が出来ないから返品とかなると仮定すると、どうもこういうことではオークション市場の縮小させる方向に働く判決のような気がします。

11月 7, 2005 at 09:51 午前 事件と裁判 | | コメント (0) | トラックバック (1)