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2005.10.28

個人情報保護法の適用問題

読売新聞より「民生委員困った…秋田市が母子家庭名簿の提供取りやめ

これも「個人情報保護法の過剰適用問題」の代表でしょう。
秋田市が、個人情報の保護を理由に、民生委員に対する母子家庭の世帯名簿の提供を、今年から取りやめていたことが、27日わかった。
同市は約10年前から毎年夏、児童扶養手当の受給申請をもとに、母子家庭の世帯名簿を38地区に分けて作成。地域ごとの民生委員約700人に渡していた。名簿には住所、氏名などが記載されていた。
今年も約2600世帯の名簿を作成する予定だったが、個人情報保護法が全面施行された4月以降、同市に「市の職員でもない人間がなぜ来るのか」といった問い合わせが相次いだ。このため、「個人情報を守ってほしいという市民の声は無視できない」(同市児童家庭課)として、名簿の作成自体を取りやめた。
どうも民生委員に世帯名簿を配るか配らないかでしか判断できない行政当局がトンマである、というべきなのでしょう。

言うまでもなく実社会はこのような二者択一に出来るわけがなく、単に技術論としては行政があらかじめ該当世帯に「民政委員に通知しても良いか?」と確認にするだけのことですから、その手間を惜しんだのだとすると「やる気あるのか?」と言われても仕方ないですね。

ところで、大きなテーマである「個人情報保護法の過剰適用問題」の問題は、秋田市児童家庭課がどう判断したのか?を検証するのが適切だと思いますが、簡単に言えば「ノーリスク」を実現するのが正しい個人情報保護法対応である、と思っているのでしょう。

わたしが個人情報保護法を個人的に勉強していて「なんとかしろ」と岡村久道弁護士に言ったのは、確か2003年5月にコンピュータ犯罪に関する白浜シンポジウムで言った時だと思います。
岡村さんは「本を書いている」とか言っていて、結局「個人情報保護法入門―新法解説」商事法務刊が7月に出ました。
それ以来、ニフティ社と「どうする?」という話を2004年末まで一年半に渡って色々な話をしたのですが、そこで大きな問題を感じました。当時はよく分かっていなかったのですが、今になるとはっきりしてきました。

「リスク無しを目指すのなら何もしない・出来ないとなる」です。
わたしは「リスクを理解した上でリスクを取ることが必須」だと考えています。

今、地元のデイケアセンター(福祉法人)の事業での個人情報保護法対応について相談に応じていますが、質問として「家族などで面会に来た人に誰(会員)を誰(家族)が見舞いなどでで訪ねてきたのかをノートに書かせているのだが・・・」というのがありました。
病院じゃないし入院しているわけではないのだから、訪問簿を付ける必要が絶対にあるとは思いませんが、万一何かあった時に追跡できないのマズイから記入してもらうのも無理からぬところでしょう。
ところが「ノートに記入しているので、前のページを見て誰が訪ねて来たか見ている人がいる」というのですから、誰が考えても「そりゃうまくないでしょう」となります。

このデイケアセンターはリスクを取っているわけです。
もちろんやり方として「前の見ることが出来ない」方法はいくらでもあるわけで、そちらを勧めましたが、それこそ羮に懲りて膾を吹く(あつものにこりてなますをふく)ということわざもあるくらいで、この世の中はリスクを全く取らないでなんとかなるとは言えません。

ところが個人情報保護法については「とにかくリスクを無くすことが重要」という事ばかりが強調されて、病院が家族に患者について情報を伝えない、警察からの問い合わせに答えない、といったことがかなりの数で報告されています。
しかし、どう考えても多くの病院は家族に患者の情報を伝えているでしょうし、警察からの問い合わせに答えるところの方が多いでしょう。
個人情報保護法の対応という観点では、回答したり家族に情報を伝えない方が正しいかもしれません。しかしそれでは、別のリスクが発生してしまいます。
病院であれば病院が管理していない情報に患者の重要な情報(遺伝病とか)があるかもしれない。そもそも病院が家族よりも情報を多く持っているとは言えないでしょう。(深く持っているだろうけど)
警察であれば、予防出来た犯罪に実行されてしまうかもしれない。

つまり問題の先送りになりかねないわけで、経験則では先送りするとコトは大がかりな話に成長します。
今そこにあるリスクを取らないのは正しいことなのか?という問題に直結しているのです。
ただ、今の世間の風潮として「リスクを取るのはアホのやること」といったところが過度にあるのかな?とも思っています。例えばインターネット掲示板で匿名で発言するというのも発言者がリスクの低減を狙っているのものです。
リスクがあまりに大きすぎるから匿名するというの否定するものではありませんが、何でも匿名というのではやはり世間は真剣に相手になることは無いですね。

こんなわけでわたしは今、個人情報保護法の正し使い方ということに「リスクを取ること」があると思っています。
「全くリスクを取りたくない」ということだと、以後の話は出来ません。
多くの会社がこのようなことを考えてもいないことは大問題だと思っています。

10月 28, 2005 at 12:50 午後 個人情報保護法 |

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投稿: せいさく0319  | 2005/10/28 14:09:08

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