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2005.07.17

中西 vs 松井裁判・第二回口頭弁論

7月15日に横浜地裁で「中西 vs 松井・学術批判が名誉毀損裁判」を傍聴してきました。
結論から言えば傍聴してもさっぱり分かりません。

一般に裁判については「ナントカ事件」と名付けて話題にします。しかしこれは裁判所が名付けているのではなくマスコミが付けているもので、裁判所の案内には「名誉毀損・原告名・被告名・法廷番号・開廷時刻」などだけが知らされます。
もちろん弁護士の名前とか出ませんし、会社名が出ることも滅多にありません。非常に有名な事件であっても「ナントカ事件の裁判」ということは裁判所に行っても分かりません。
まして、関係者が「○○会社の社長」といったように肩書で有名とか、芸名しか知らない人の裁判では裁判があることが分かりません。

こんな理由で裁判に名付けるというのはとても大事であって、わたしが注目している裁判の例としては「日本平和神軍裁判」や「ホームオブハートとToshi問題を考える会」が当事者の裁判があります。「ホームオブハート関係の裁判」と言えば、元の事件が元X-JAPANのToshiやMASAYAが関わっている、自己啓発セミナー絡みの問題であり、児童福祉法の問題などである、と伝わります。

ところが「中西 vs 松井」事件はこういった分かりやすい説明が出来ません。
実際に裁判を傍聴した方のネット上での報告でもコレといった明確な書き方がありません。
apj さんの blog の「環境ホルモン濫訴事件」と題した記事の事件名は「インターネット上の表現の自由を考える会」の掲示板上で提案された名前です。というわけで名前も簡単に決められないほど「ヘンな裁判」=「濫訴」ということでしょう。

この事件をわたしが知ったのは、山形大学助教授で水をめぐるトンデモ商法を取り上げている apj さんが「インターネット上の表現の自由を考える会・掲示板」に5月15日に報告したからです。
実際の騒動については、横浜国大の益永先生の報告の通りです。
2004年12月15日に第7回内分泌攪乱化学物質問題に関する国際シンポジウムが開かれ、セッション6リスクコミュニケーションは中西準子座長で後に名誉毀損の原告となる、京都大学の松井三郎教授がプレゼンテーションを行った。

2004年12月24日づけで中西先生はご自身のサイトの「雑感」に松井教授のプレゼンテーションについての記事(今は読めないが「雑感」なのだろう)を発表した。

2005年1月17日に松井教授は中西先生にメールで抗議した。

2005年1月20日付けの「雑感」で中西先生は「抗議があったので削除した」と説明しています。

2005年3月16日松井教授、提訴したことを「化学物質問題市民研究会」の掲示板で公表
という経緯のようです。

原告側の主張は訴状の概要を示しているプレスリリースによれば
中西氏は、自らのHPに「雑感286-2004.12.24『環境省のシンポジウムを終わって―リスクコミュニケーションにおける研究者の役割と責任』」と題する記事を掲載し、その中で、松井氏が、

① 「環境ホルモン問題は終わった、次はナノ粒子問題だ」というような発言をした
② 新聞記事のスライドを見せたが、原論文も読まずに記事をそのまま紹介した旨の記述をした。


しかしながら、松井氏は、自身の環境ホルモン研究結果から、ナノ粒子の有害性に言及し、新聞記事のスライドを紹介したのであって、中西氏の上記の記述は事実に反するとともに、松井氏の名誉を著しく毀損するものである。
はっきり言えばなんでこれが名誉毀損になるのかが分かりません。わたしとしては問題点は中西先生の学問上の見解や社会的な立場などに関係なく「自分のHPで意見を発表したら名誉毀損になった」であり、かつその内容というか論争の舞台が国が主催した専門家のシンポジウムつまり学会での発表についてであることだと解釈しています。
拡大解釈をすると学問上の批判は名誉毀損になるのか?ということで、原告にはこの点について明快な主張をする社会的な義務があると考えます。

第二回口頭弁論でも原告の主張が不明瞭であるとは apj さんの blog や同じく傍聴した com さんが「インターネット上の表現の自由を考える会・掲示板」でも述べていることと同じです。

民事裁判では原告・被告とも意見の主張は書類で行われるために原告側が読み上げた概略ではあまり判然としませんが、法廷で原告側弁護人の中下弁護士が前回(第一回口頭弁論)でのく被告側弁護人の弘中弁護士の主張に反論する形で新聞記事を単に見せたことを批判の対象にすることが名誉毀損である、という論理を展開したように聞きました。 この部分は現実に聞いていても「なぜなのか?」という点には答えていないので、中下弁護士の主張を推測しないと、ここに書くことが出来ません。

なぜ新聞記事を「漠然と紹介した」(中西先生がこのような記事を書いたのかは分かりません)といった批判が名誉毀損を構成するのか?というと、中下弁護士は
新聞記事は多くの人手によって作られるのだから、客観的事実である。
はっきりしているのは上記の部分ですが、仮に客観的事実であうが「新聞記事を無批判に提示した」というのが、名誉毀損になるものか?としかなりません。はなはだ分かりにくい話しで、松井教授が新聞記事を紹介したことについて仮に批判的であろうとも意見表明したように見えることが名誉毀損になっていくのは説明してもらわないと分かりません。意見表明は意見は自由ですから名誉毀損にはならないのです。 もうちょっと、実際のやり取りについて具体的に説明が無いと、原告・被告の主張がそもそも分からないから、裁判の勝ち負けについても分かりません。
その一方で、インターネット上で意見表明したことについて、あまりに勝手な解釈で名誉毀損とされるようなことは、提訴されること自体を含めて減らすべきだと思います。
そうしないとせっかく手に入れた個人が社会に意見を発表する途を閉ざすことになります。

それにしても「名前の付けようがない裁判」なんてのは困ったものだ、ということは確かですね。

7月 17, 2005 at 12:36 午後 裁判傍聴 |

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コメント

こんにちは。こちらでははじめましてですね。裁判の膨張レポをするつもりでしたが、時間がなくて放置気味にorz

ひとつ個人的に思うのは、原告の主張はやたらと三段論法を多用してるのかな?という点です。しかも、それぞれが相互に連携しているとは思えない点がすごい^^;

あと、その後の雑感を読む限り、学会とその存在意義を成果で否定しそうな研究者の、言ってみればガキのケンカ、と見えてくるのは気のせいでしょうか?^^;

投稿: com | 2005/08/04 18:24:39

comさん、いらっしゃいませ。
apj さんが blog に書いていますが日曜日にお会いしてお話ししました。
また、中西先生とメールで連絡を取っていますから、
現時点では少々ですがまだ公開されていない情報を知っていますし、
訴訟に直結するのかは分からないですが、業界(学会)の背景
といったところについても説明を受けています。

それらを総合して考えると、com さんの

    >その後の雑感を読む限り、
    >学会とその存在意義を成果で否定しそうな研究者の、
    >言ってみればガキのケンカ、
    >と見えてくるのは気のせいでしょうか?^^;

というのは、ガキ(のような人)が喧嘩している、という解釈と
ガキの喧嘩のようなことでもあえて実行している、という解釈が
あり得るのだな、と気がつきました。

そしてわたしは現時点では後者なのかな?という気がしています。
まぁ、もう少しすると apj さんの進めているサイトの構築も出来るので
そこで議論するのが良いかと思っています。

酔うぞ拝

投稿: 酔うぞ | 2005/08/04 21:27:45

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