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2005.06.29

平和神軍裁判・第一回公判その3

「平和神軍裁判・第一回公判その2」に起訴状をテキスト起こししましたが、わたしが注目しているところを書きます。
「インチキFC花月粉砕!」「貴方が『花月』で食事すると、飲食代の4~5%がカルト集団の収入になります。」

会社説明会の広告を引用したページにおいて、その下段に「おいおい、まともな企業のふりしてんじゃねぇよ。この手の就職情報誌には、給料のサバ読みはよくあることですが、ここまで実態とかけ離れているのも珍しい。教祖が宗教法人ブローカーをやっていた右翼系カルト『平和神軍』が母体だということも、FC店を開くときに、自宅を無理矢理担保に入れられるなんてことも、この広告には全く書かれず、『店が持てる、店長になれる』と調子のいいことばかり。」
起訴状にはこの2点を示して「虚偽の内容を記載」「虚偽の広告をしているがごとき内容を記載した」と述べています。

しかし、問題となったHPは60ページ以上の記述があるそうで、その中から2ヶ所だけを問題にする、という手法を使えばどんな文章でも問題に出来るでしょう。
さらに例えば2ヶ所以外が問題の発言をする理由などが並んでいたらどうするのか?

これについて起訴状では
などと前記花月食品が虚偽の広告をしているがごとき内容を記載した
と述べていて、これを弁護側が突っ込みを入れたわけですが、この二点だけに絞ること自体が全体として無理なのでしょうから「など」としたと理解は出来ますが、それなら60ページ以上全体について詳細な解釈を示す方がスジというものだと感じます。

少なくとも、名誉毀損なのか侮辱なのか営業妨害なのかは説明するべきじゃないかと思いますね。別の概念なのですから、名誉毀損であって侮辱も営業妨害も適用することが相応しくないとする理由の説明があってしかるべきだと思うわけです。

世の中のトラブルには因果関係があるのが普通だと思いますが、これが裁判になるとその一連の流れの中の特定の事件などについてだけ問題にせざるを得ません。
だいぶ前の事件ですが、自営業の男性の仕事場の電話番号を掲示板に書き込んだために、営業妨害で損害賠償請求になった事件がありました。
この事件の判決は、掲示板に電話番号を書いた人が敗訴しますが、元の原因は被害者である男性が加害者の知人の女性にストーカー行為をしたからです。
なかなか微妙ではありますが、理由も無く掲示板に電話番号を書いたわけでない、という展開もあり得たわけですが、そうはならなかった。

必ずしも、市民的な常識の範囲だけで法的な対応が出来るわけではないのは、名誉毀損の民事訴訟などについて紀藤弁護士からレクチャーを受けてビックリした次第です。
インターネット上に書き込みをすること自体が名誉毀損などの可能性を常に含んでいるわけですから、実際に事件や訴訟になった時にどう進行していくのか、その理屈はどういうものなのか、は勉強しておくべきです。

6月 29, 2005 at 01:03 午前 裁判傍聴 |

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コメント

刑事で名誉毀損というと『噂の真相』がありました。
http://www.ultracyzo.com/cyzo/contents/0505/uwasa/02.html
「対象が誰であれ、人のプライバシーを書けば、事実関係に関係なく、名誉毀損だ」というものだったのかどうかは、原判決がWebの最高裁判例集にないのでわかりませんでした。最高裁の決定は今年の3月だと思うのですが・・・

公益性、真実性が軽視される流れがあるのですかね。

投稿: と | 2005/07/05 12:30:55

コメントありがとうございます。
ウルトラサイゾーの記事は3月のことですね。
ここに書きました。

http://youzo.cocolog-nifty.com/data/2005/03/post_4.html

このエントリーにも書きましたが、2003年11月20日に弁護士会館で開かれたシンポジウムで岡留氏がパネラーとし参加したのですが、彼をして名誉毀損の損害賠償の原理を知らなかった(わたしはもちろん知らなかった)のに驚いたものです。

つまり、噂の真相が人気になった理由の一つが岡留編集長がそこらへんに不用心だったからこそではないのか?という思いが今はあります。

公益性・真実性について裁判所は刑事事件であっても被告側の挙証によって判断するわけで、岡留のスタンスが上記のような「正義は黙っていても正しい判断を下す」といったようなことを考えていた(オーバーな表現ですが)とすれば、公益性・真実性についての証明が裁判所から見て不十分だった、と結果的には解釈するべきでしょう。

公益性・真実性について裁判所が軽視するのではなくて、どうもモノサシの作り方だか使い方がまずいのではないか?と思うようになりました。

裁判所というのは前例主義がすごいところなので、名誉毀損については「名誉が毀損された」という事実にあたるインターネットの掲示板などがあれば、訴状を受け付けてしまうようです。
こんなアイマイな話で良いかの?とは思いますが、刑事においても同じで日本平和神軍事件の起訴状もそうとうヘンテコですが、これで起訴してしまう。

つまりインターネット時代の名誉毀損問題を考えてないから、ささいな事で裁判になってしまう。
一旦裁判になってしまうと、原告(検察)側は黙っているだけでよくて、被告側がひっくり返す義務がある、と従来通りに進行しているわけですが、元の原告の主張や起訴状がトンデモであると、ひっくり返すこと自体が難しくなります。

岡留氏(噂の真相)については、岡留氏が注意深くやれば回避出来たように感じますが、DHC労働争議で「HPを作ったから名誉毀損」で訴状が通ってしまっています。
HPのどこが名誉毀損なのかを述べてないのですが、これでは反論が出来ません。
反論出来ないと負けという現行の名誉毀損裁判の扱い上でこれは大問題だと思っています。

ホームオブハート事件は幾つのも裁判があるのですが、その中に名誉毀損で山本ゆかり氏が被告になった名誉毀損裁判があります。
ところがこの亊案は「テレビで話した」なんですよね。岡留氏の場合には「雑誌を出した」ですから、同じ話であれば山本ゆかり氏の場合にはテレビ局が相手になるはずなんですよ。

こんな具合で、現実の判決は別にして名誉毀損で裁判するためのハードルが低いのか、訴える側の程度が悪くなったのか判断に迷うところですが、トンデモな名誉毀損提訴が増えているのではないか?と強く思うようになりました。

投稿: 酔うぞ | 2005/07/05 12:56:06

酔うぞさん、解説ありがとうございます。

なんとなくそんなことだろうと思って判決文を探してましたが、岡留氏は(裁判テクニックとして)最善を尽くしたというわけではなさそうなのですね。

名誉毀損の訴えについては、自分に関して公開された文書さえあれば可能ということになるのですね・・・原理上本人が名誉を毀損されたという主観が重要になっているので、被告はそれこそひっくり返さないといけないという・・・うーむ。

>公益性・真実性について裁判所が軽視するのではなくて、どうもモノサシの作り方だか使い方がまずいのではないか?と思うようになりました。

慰謝料とか営業妨害とかなら、守るものの具体的な定義とその方法というパラメータがまだ判り易いので、モノサシをどうすればなどと考える気になるのですが、名誉毀損の場合どこのモノサシをどうするというのがもやもやしていてもどかしいです。言いがかり的な名誉毀損で訴えられたから名誉毀損で訴え返すとかになると、表現の自由を守るための法律が独立して存在しない?のがいけないのか・・・

例えば原告に論点をはっきり列挙させて、そのうち無罪となったものがあるときは有罪のものと相殺するとか(いまは1つでも有罪なら有罪ですよね)。・・・いやー自分で書いてて無茶だ・・・いっそ名誉毀損なんてないほうがまだ(^^;

投稿: と | 2005/07/05 17:15:07

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