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2005.03.01

個人情報保護法・お勧めの解説本

今日個人情報保護法とコンプライアンス・プログラム」鈴木正朝著・堀部政男監修、商事法務刊 3800円を買ってきました。

個人情報保護法は4月1日に施行が迫っていますが、日を追うごとに「大丈夫なのか?」的な話題が出てきています。

弁護士が大勢参加しているMLで10日ほど前に「弁護士は本当に個人情報取扱事業者なのか?」という質問が弁護士さんから出ました(^_^;)

どういうことかと言うと

弁護士は弁護士名簿を使って業務をしている。弁護士名簿は個人情報データベースであるから弁護士は個人情報取扱事業者だと言うのだが、弁護士名簿と電話帳で何が違うのだ?
ということから発生しました。
もちろん、弁護士名簿も電話帳と同じ扱いにすれば弁護士は個人情報取扱事業者ではなくなる、という方向の考え方があるですが、これについて法律上は弁護士は弁護士名簿を使っているから、個人情報取扱事業者になるということなって、その解説をした著者の鈴木さんはさらに踏み込んだ考え方をこの本に書いていると、ご自身が紹介したので買ってきました。

結局のところ、個人情報保護法制によって真に守るべきものは何かを見極めることが重要である。たとえば、世代をまたがって個人情報が管理され、親の犯罪歴、病歴、職歴、納税額などの個人情報によって子の就学、就職、結婚、経済活動などに影響が及ぶ社会は、まさに憲法の定める「個人の尊厳」の否定にほかならない。

と個人情報保護法の厳格に過ぎる適用は問題外であると論じています。

一方では個人情報の厳格な管理を要求する声があり、他方では個人情報の厳格な管理は社会経済活動そのものを圧殺する、といった意見もあります。
なんでこんなことになったかについて、鈴木さんは

個人情報保護分野において一般法を制定することは、立法論的にはやや乱暴なアプローチであることは否めない。たとえば、名刺情報から遺伝子情報までの多種多様な個人情報をわずか十数条からなるルールで規律することを意味しており、名刺情報のような個人情報を念頭に置いた場合は過剰規制と評価され、遺伝子情報のような個人情報を念頭に置く場合はいわゆるザル法と批判されることになる。

と問題点が、ここにあると指摘しています。
この点からは実務者としては法律改正に期待することになってしまいます。


法律の素人にとって、法律が成り立っている原理や考え方を知ることは条文を暗記したり、他の法律の詳細を知らないでも関係性を推測できるといった意味で必要なことだと思いますが、個人情報保護法はあまりに多面的なことを含んでいるので、意見交換ですらそのシーンでの議論の立場によって毎回結論が違ってしまうというほど、難しい法律です。
その上、解説本で問題点を指摘した本は今まで見たことがないのですが、この本が問題点を指摘しているのは、実務的に何を重視するべきか、将来あるかもしれない法改正がどんな形になるのかを推測するための教材、といった意味で是非ともお読みになることをお勧めします。

3月 1, 2005 at 01:00 午前 セキュリティと法学 |

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 3/4雪が降率盛る朝、ビッグサイトのレセプションホールに行って来ました。  リンクを貼らせて頂いている酔うぞさんが、推薦しておられた日本経済新聞社刊「これだ... 続きを読む

受信: 2005/03/06 22:44:18

コメント

酔うぞさん、こんにちは。yuu2です。

 「日経セキュリティ会議」に行ってきました。

>名刺情報から遺伝子情報までの多種多様な個人
>情報をわずか十数条からなるルールで規律する
>ことを意味しており、名刺情報のような個人情
>報を念頭に置いた場合は過剰規制と評価され、
>遺伝子情報のような個人情報を念頭に置く場合
>はいわゆるザル法と批判されることになる。

 鈴木氏は対談の中でも述べておられました。
 聴講のメモを書きましたので、トラックバックさせて頂きます。
  出だし部分が聞けていないので、ご存じでしたら教えて頂ければ幸甚です。

投稿: yuu2 | 2005/03/06 22:40:12

18歳になる子供(学生)が病院に通って薬を服用しています。親はどういう医療を受けているか子供がどんな病気か。保護者として子供の健康を守る義務があります。病院は個人情報保護法で子供の同意がないと教えられないと回答しています。未成年者で扶養者を病院任せでいいのでしょうか?治験では未成年者の同意には法的に問題があり、通常親の同意が必要です。
親の責任は、個人情報保護法に及ばないのでしょうか?私ども親も医療人で病気・薬に知識は十分あります。どなたか回答を下されば幸いです。

投稿: igaku | 2005/10/26 0:20:08

igaku様

なかなか難しい問題ですが、コメントでは人目につかないので議論が困難です。
よろしければ、わたしが新たにトピックで問題をコピーして議論しようかと思います。
よろしければ「了承する」を明示してください。

酔うぞ拝

投稿: 酔うぞ | 2005/10/26 0:55:44

某県の医師会のQ&Aで同じような質問を拝見しました。未成年でも判断力があり、親であっても同意がないと病名やお薬の告知を拒絶できるようです。ただし、子供の生命、あるいは周囲に危害を加える場合、もしくはガンなどの難病で手術や移植を必要とする場合は例外となり医師の判断で親に告知できるようです。つまり病気の種類により個別に判断されるようです。結局のところ、未成年者の健康管理の責務について親はそれほど重要視されていません。
ただ子供にもしものことがあれば、病院側の責任はこれまで以上重いのではないでしょうか。たとえば鬱病の場合、老人の一部には孫にあまり薬を飲まない方がよいとか言う人もいます。それで家族が鬱病と知らなければ、薬の服用を中止させるかもしれません。医師はそのような背景しりつつ、病名を家族に教えずもしものことがあれば業務上過失に問われる可能性はあります。個人情報の保護と命のどちらが大切かは誰でもわかる問題です。患者の治療と医療の安全を第一として個人情報保護がありますので医師に判断ミスがあると重大です。
igaku

投稿: igaku | 2005/10/26 23:49:06

igakuさま

お願いがあります。

「病院側の責任はこれまで以上重いのではないでしょうか。」

という半疑問形は止めていただきたいです。

これは是非のいずれの発言も反論される余地があるので、発言できないとなります。

「病院側の責任はこれまで以上に重いと考えます。違っているでしょうか?」なら答えが出来るという意味です。

次に、前回にコメントした「新たにトピックを立てて」ということにご賛成いただけないということであれば、議論・検討を主にはしない、というお考えであるかと思いますので、答えられる場合に答えることもある、ということでご了解下さい。


個人情報保護法の過剰な使い方(?)の危険は昨年5月のコンピュータ犯罪に関する白浜シンポジウムではそれなりに結論が出ていた問題です。
一言で言えば、場合によっては過剰な適用も仕方ないほど個人情報流出について防止策が無いということです。

その一方で、個人情報保護法だけが法律ではないので、何もかもが個人情報保護法の問題ではないわけで、実際に個人情報保護法上も「生命身体財産の危機」では免除されるとなっています。

次に、18歳の子供をどう法律上どう扱うかですが、情報に関する法律で18歳が出てくるのは「児童買春・児童ポルノ規制法」で18歳以下の児童について適用であり、かつ18歳以下の児童についても取締の対象(逮捕もあり得る)となっています。
18歳以上については成人と全く同様で、法律の対象にはなりません。

つまり法律上の成人の概念は選挙権などと必ずしも一致しません。
運転免許も16歳から取得可能です。

このような例から、実態から検定されるべきことでしょう。
つまり「18歳だから親に絶対的に・・・・」とはならないでしょう。
これらの争いついて、最終的な解決は裁判所しかありません。

ところで医療一般で言えば、例えば入院などでは家族に了解・連絡する相手を決めますから、そのような人たち(家族)に対して医療機関が「個人情報保護法だから」とか言い出したら、いわば矛盾になってしまうでしょう。
また、実際に二月ほど前に私自身が経験しましたが、家族にへの説明を要求すると特に問題なく説明されました。

一般的に医療機関(病院)の立場はこのような厳密二言うと個人情報保護法上はリスクを冒す対応をすることになりますが、それで業務が円滑に動くという側面が強いです。

このような展開にならない理由として、病院が全く個人情報保護法の運用でリスクを取らないとしている場合には、長期的には医療の実施が難しい、つまり病菌経営が成立しなくなるでしょう。

もう一つは家族と称する一部の人に開示できないという場合で、これは医療関係者の話ではかなり注意は払っているとのことです。

いずれにしろ、実態に合わせてリスクを取るというのが現在の個人情報保護法の運用には不可欠である、とわたしは判断しています。

この点の研究についてはまだまだ始まったばかりです。

投稿: 酔うぞ | 2005/10/27 0:37:28

酔うぞさま
的確なご意見だと思います。新しいトビックスとして取り上げていただけることに異論はございません。酔うぞさまの関係者の入院に関しては入院されたご本人の同意が得られ、それが病院のリスクを少なくしかつ治療にプラスになるためと判断いたします。私の子供の場合、親に病名を告知するのに同意していないという問題があります。子供の通う病院は適切な対応をしていると思いますが、親の心子知らずで。法律では割り切れないものであり、よくdiscussionをしていただきたいと存ずる次第です。

投稿: igaku | 2005/10/27 1:07:04

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