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2005.01.07

個人情報保護法を考えてみる 1

個人情報保護法を考えてみます。
4月から個人情報保護法が施行されます。
この法律は行政法というもので、行政から主に企業や団体などの個人情報の取扱について管理監督があるという趣旨の法律です。
だからある特定個人の個人情報を悪用したといったことが直接個人情報保護法違反にはなりません。
実際には、
個人情報が悪用された→個人情報が流出したのだろう→流出させた企業の情報管理に落ち度があったのだろう→監督官庁が企業を調査する→監督官庁は企業に情報管理について是正を指示する→命令を受けた企業が命令に反した→個人情報保護法違反で管理者が処罰される。

なんてことになります。

こんなことなので、企業は個人情報保護法対応のために莫大な投資をしているのが現状です。
一例が日立製作所の発表した「社内のPC全廃」です。PCに代わってターミナルを配付するのでしょうが莫大な投資額になるでしょう。

ところで個人情報保護法が定義している個人情報は次のようなものです。

第二条  この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。

これではナンのことか分かるような分からないような・・・です。
ところで、個人情報保護と境目があいまいなものに「プライバシー保護」があります。
プライバシーは個人にとってはかなり明確ではありますが、それが他人にとっては「それくらいいじゃないの」というところで、摩擦になるから「個人が勝手にされている権利」といった概念プライバシーである、とも言われています。
もっとも法律上はプライバシーを権利として確定していませんし、そもそも法律で決めることなのか?という議論もありますが、同時にプライバシーが全く存在しないということもあり得ないので、かなり自然なことでしょう。

これに個人情報がくっつくとヘンなことになります。
例えば「公職」という言葉があって、多くの場合は議員などの職務や上級公務員の職務を指すようです。じゃあ「私職」という言葉があるのか?というとあるわけ無い。「公職」だけですね。
そこで「代議士の○○が愛人を・・・」なんて週刊誌などが書くと愛人なんてのは職とはあまり関係ないわけで、公職であろうがプータローであろうが人類公平の原則によるでしょう。
しかし実際には公職の人の愛人問題を週刊誌に書いても多くの場合は名誉棄損にならない。一方、市井の人の愛人問題を電柱に貼ったりすると、名誉棄損で逮捕される可能性は高いです。この違いはどこから出てくるのか?

簡単に言えば「個人として違う人だから裁判の結果も違う」ということになります。
つまり「個人」とは「社会の中での個人」であるということを改めて認識にする必要があります。
私たちは自分の氏名を自分で変更することは許されません。裁判所の判決を必要とします。同様に住所のデータは住民票のデータでありますから、自分で管理していないことは確実です。
ところが個人情報保護法の個人情報の定義に「氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」となっているのですから、氏名や住所は個人情報の一部であることになります。

さて、ここで後戻りになりますが「保護するべき個人情報とは何なのだ?」という問題が浮かび上がって来ますが、それは法律にも書いていない。
ちょっと大変なことになってきました。
個人情報保護法には保護するべき個人情報の定義が無いようです。

1月 7, 2005 at 02:42 午後 セキュリティと法学 |

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コメント

酔うぞさんこんにちは。個人情報保護blogの最適解です。
個人情報保護法では、酔うぞさんが書いているとおり第二条で個人情報とは何かを定義していますが、経済産業省のガイドラインではさらに下記のように事例を挙げています。

事例1) 本人の氏名
事例2) 生年月日、連絡先(住所・居所・電話番号・メールアドレス)、会社における職位又は所属に関する情報について、それらと本人の氏名を組み合わせた情報
事例3) 防犯カメラに記録された情報等本人が判別できる映像情報
事例4) 特定の個人を識別できるメールアドレス情報(keizai_ichiro@meti.go.jp等のようにメールアドレスだけの情報の場合であっても、日本の政府機関である経済産業省に所属するケイザイイチローのメールアドレスであることがわかるような場合等)
事例5) 特定個人を識別できる情報が記述されていなくても、周知の情報を補って認識することにより特定の個人を識別できる情報
事例6) 雇用管理情報(会社が従業員を評価した情報を含む。)
事例7) 個人情報を取得後に当該情報に付加された個人に関する情報(取得時に生存する特定の個人を識別することができなかったとしても、取得後、新たな情報が付加され、又は照合された結果、生存する特定の個人を識別できた場合は、その時点で個人情報となる。)
事例8) 官報、電話帳、職員録等で公にされている情報(本人の氏名等)

また、あたらない例も挙げています。

事例1) 企業の財務情報等、法人等の団体そのものに関する情報(団体情報)
事例2) 記号や数字等の文字列だけから特定個人の情報であるか否かの区別がつかないメールアドレス情報(例えば、abc012345@ispisp.jp。ただし、他の情報と容易に照合することによって特定の個人を識別できる場合は、個人情報となる。)
事例3) 特定の個人を識別することができない統計情報

というわけで、私としましてはそんなに定義があいまいとは考えておりませんが、いかがでしょうか?

投稿: 個人情報保護blog/最適解 | 2005/01/08 2:41:30

コメントありがとうございます。

>私としましてはそんなに定義があいまいとは考えておりませんが、いかがでしょうか?

これはシリーズで書く予定なので(^_^;)
個人情報保護法上の個人情報の定義があいまいか、という問題ではなくて「これじゃ仕えないないだろう」「だから個人情報の定義としてアイマイだ」という論理になります(^_^;)

簡単に言えば、個人情報保護法上は氏名(姓名)は個人情報になると思いますが、氏名の漏洩という問題が起こりうることなのか?という点を問題にします。

おそらくは、こういう議論をしているところは非常に少ないと思うので、是非ともお考えをお聞かせ下さい。

投稿: 酔うぞ | 2005/01/08 16:28:38

nariです。
 割りに簡単に手に入ってしまう情報に氏名があるかと思います。私的には、氏名は知られたくないと思う状況がある以上、保護の対象になるべきだと思います。
 特にネットワーク上では、実名で情報公開している状況が少なく、ハンドルネームのような形で個人を表しているのではないでしょうか。
 このハンドルネームと個人名を実名表記するような情報の漏洩について、個人情報の漏洩として扱って欲しいと私は思っています。(漏洩にあたるかどうかはわかりませんが)

投稿: nari | 2005/01/20 1:53:26

nariさん

>氏名は知られたくないと思う状況がある以上、保護の対象になるべきだと思います。

勉強中(現在進行形)なので、話がひっくり返るに近くなっております。

個人情報保護法の理屈を考えるつまり法律学者の立場になる能力もなければつもりもありません。
しかし、実務的に個人情報保護法とどう向き合うかということは必要だと思うので、色々と勉強しています。

この実務的にというのが強く出過ぎたので「保護するべき個人情報」という考え方を強く言いすぎたのでしょうが、個人情報保護法そのものには「保護するべき個人情報」という概念そのものがありません。

そこで、法律どおりだとすると、個人情報にあたる(あたるかもしれないも含むかも)情報はすべて個人情報として取り扱う、という考え方は成立します。

しかし常識的に考えてこれはちょっと無理がありすぎる。
なぜ個人情報保護が必要なのか?と言えば、実績として悪用されているからだ、が回答ですから、逆に言えば「悪用されなければ保護されなくても良い個人情報もある」でしょうし「悪用されるされないに関係なく、病歴なんてのは隠したい」といった人も居るでしょう。

結局は実務では、保護する個人情報という概念は必要だろと思います。
この「概念」といったものがなぜ法律に無いのか?となりますが、どうも常識であろうから法律よりも上の概念だ、ということらしいです。
ここらはもうちょっとまとめてから再度書きます。

かなり微妙だし、一人ひとりで価値観や判断基準が違うので、法律でしばることの限界は低いのかもしれません。

投稿: 酔うぞ | 2005/01/20 12:14:57

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